出席者:塚本高史
画家を志望していた父が学生時代に描いたスケッチブックから浮かび上がってくる父の想い、そしてそれを知った時、息子は…?新世代の作家として注目を集めている本多孝好の40万部を超えるベストセラー短編集「FINE DAYS」に収録された一篇を、ミスチルやスガシカオなど、数々の名作PVの演出を手掛けてきた窪田崇監督の手によって映画化された。父親の青春時代を知り、人生の大切なものを見つける主人公・聡史を演じるのは、『木更津キャッツアイ』シリーズなどの塚本高史。また、寡黙で不器用な父親を演じた名バイプレーヤー・國村隼の存在感も忘れられない。
今回は映画・TVと幅広い分野で活躍し、悩み多き主人公:聡史を見事に演じた塚本高史さんにお話を伺った。
主人公:柳田聡史を演じるにあたって、心がけたことはありますか
■塚本高史(以降、塚本):「テーマが“父と子”の話しなので、リアルな親父との関係性・距離感を大事に「リアルにできたらなぁ」と思いそれを心がけながら演じました」
國村隼さんと親子関係を築く上で、どのようなディスカッションをされたのでしょうか
■塚本:「全くしてません。役のことに関して「ああしろ、こうしろ」ということはありませんでした。すんなり親子関係が築けたと思います」
演じられた聡史に共感できる部分はありますか
■塚本:「実際、自分の親父との関係って本作みたいなところもあるし、親父への思いもあるし、共感するところは多々ありました」
塚本さんは、ご自身のお父様とどのような親子関係を築かれていますか。また、お子さんとどのような親子関係を築いていきたいですか
■塚本:「特に「こういう親子関係を築きたいからこうしてきた」というのもありませんし、他の家庭の親父と息子との関係を見たことがないのでよく分からないけど、僕は親父と自分との関係は普通の家族だと思っています。
僕もその時その時に楽しいことだったり、やりたいことをできるような普通の家族の関係を築ければと思っています」
以前インタビューで“親父とは友達みたいな関係”と答えた記事をみました
■塚本:「そうですね。ふたりでスノーボードやスキーに行ったりもするし、僕が「音楽やりたい!」って言った時に、ギターを買ってきてくれたのも親父だし。友達と一緒に遊んでる感じですね」
『木更津キャッツアイ』ではハイテンションなアニ役、『陰日向に咲く』ではオタク役と、個性的なキャラクターを演じられていますが、役の切り替えに意識している部分はありますか
■塚本:「意識はしていないです。自分が台本からインスピレーションを受けたものを、現場に持って行って監督とディスカッションして作り上げていくので。だから、事前に役作りとかはしないですね。現場に行ってみないと分からない事もあるし、共演者の方とかとの空気感を感じなければ分からない事もありますから。僕は現場に行ってみて役を作り上げていくスタイルなので、現場に入る前に「前の役はこうだったから、ああしよう」とかは全く考えないです」
國村隼さん、和田聰宏さん、原田夏希さんと共演されてのご感想は
■塚本:「國村隼さんと一緒にお芝居をしてみて「尊敬される人って、こういう人なんだな」って感じました。撮影の合間でも同じ目線になって喋ってくれるし、いい意味で子供心を持った人だと思います。僕が興味あることにも共感してくれる方だし、かと言って上から「こうしろ、ああしろ」って言うわけでもありませんでした。人間として好きな人です。
和田さんとは共演するのは2回目ですが、ちゃんとお芝居したのは初めてでした。今回はガッツリお芝居をさせてもらいました。和田さんは役を自分の中で噛み砕いて、言葉にして、行動にしてお芝居している方でした。
原田さんは、以前NHKの連続テレビ小説『わかば』で共演させていただきました。その頃彼女は若くて、僕も田舎の恋人役みたいな感じでした。今回は全くシチュエーションが違ったので、その時よりは大人の芝居ができたかなという気がします」
和田さんや原田さんとは以前も共演されていたということで、今回の現場ではやりやすかったですか?
■塚本:「そうですね。特に役のことに関して練るというよりは、自分たちが思ったことを現場に持ってきてお互い演じる感じだったので、和気あいあいとやることができました」
本作のもうひとつのテーマとして“決断”があると思います。
人生のターニングポイントには必ず大きな決断が必要ですが、そのような決断をされたことはありますか? また、今後そのような決断をしなければならない時、どう行動されるのか予想はつきますか?
■塚本:「やはりこの業界に入ったことが、大きな決断だと思います。当初はそこまで深く考えていなくて、漠然と「テレビに出て、目立てりゃいいや」ぐらいにしか思ってませんでした。でも映画初出演作『バトル・ロワイアル』で深作欣二監督に出会い考えが変わりました。「努力したらしたぶん、認められる場所なんだ。だったらもう少し真面目にやっても面白いんじゃないか?」と。この業界に入って初めて周りからの見る目が変わって、自分も仕事に本腰入れてやる楽しさを見出させてもらったのが『バトル・ロワイアル』で、それが自分のターニングポイントだったのかもしれないです。
これから、そういう壁にブチ当たる事があるかもしれないけど、あんまり考えないようにしています。そういうものにブチ当たって、どうしても悩まなきゃいけない時には「悩んでもしょうがない」と思っているので。そういう悩んでる時間があって「ああしよう、こうしよう」って決断するんじゃなくて、流れに身を任せる感じですね。天秤があるんだったら、あえて重くて辛い方に行こうと思っています」
最後の質問です。本作に出演して、新たに自分自身に得たものはありますか
■塚本:「一番身近にいる人ほど、その大切さに気づかなかったりすると思います。そういう人が余命いくつとかって言われた時に、その人のためになったり、その人との思い出を作ったりと、色々と行動すると思うんです。
けどこの映画を見て、余命とか関係なくて、明日からちょっとでもその人に自分から歩み寄るきっかけになってくれればいいと思います。一番近くにいて、いて当たり前と思っている人ほど一番大事なんだということを僕も気づいたので。皆さんもそういうことに気づいてくれたら嬉しいです」
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『イエスタデイズ』
配給:エスピーオー
公開:2008年11月1日
劇場:シネマート新宿ほか全国にて
公式HP:http://www.yesterdays-movie.com/
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