今回は 何故、ボロ泣きさせられたのか?について語ろう。
【注意!!】
以降の記事本文には作品ストーリーのネタバレが多く含まれておりますので 映画本編を未見の方は 是非、先に本編を御覧になる事を強くお薦めします。
私は「陣内孝則」という人物が大好きである。
とはいえ、彼がロッカーだった頃の事は殆ど知らず、彼を初めて知ったのは1986年の二つの倉本聰作品からである。
最初はフジ系で放映された連続ドラマ「ライスカレー」で 主人公(時任三郎)の幼馴染みで同じ野球部出身 いい加減な先輩(北島三郎)の口車に乗せられ 主人公と共にカナダにライスカレーの店を出すつもりで渡るが 頼りの先輩は友人の女房と駆け落ちし、途方に暮れる。
この時に陣内が演じた女癖が悪く、いい加減で しかしながら母親の死に見せた苦衷… その演技に私はすっかり魅せられた。
で、同じ年に公開された「時計 Adiue I'Hiver」では 陣内が演じたのは主人公(中島朋子)の母親(いしだあゆみ)の友人であるオカマ
だが、このオカマ キメのシーンで男に戻り、恐ろしく渋い台詞をバシッと決める。
そのシーンで私は 腹の底からシビレた。
その後、いわゆるトレンディ・ドラマなるものに出演し いつしか軟派なオチャラケぶりが定着したけれど 1998年にフジ系で放映された「眠れる森」で ストイックな個性派ぶりをいかんなく発揮し 私は再びシビレた。
さて、ここでひとつ注目すべきは かつての倉本聰における作品の一番の魅力は
「脇役に適材のキャストを配し それぞれの個性をキッチリと際立たせて輝かせる」
という部分だと私は感じている。
ゆえに、「前略おふくろ様」では 主人公はもとより、半妻(室田日出男)、利夫(川谷拓三)など 脇の役者達が私は大好きだったし、「北の国から」で言えば 草太や正吉が大好きなのである
で、勝手な摺り合わせと思われても結構だが 陣内孝則が監督した過去の2作「東京★ざんすっ」「ROCKERS」も含めて 陣内はキャスティングに関して そんなかつての倉本イズムを継承していると私は思う程 良いキャスティングと それぞれにキラッと光る場面を与えているところに 物凄く好感を抱く。
で、今回の「スマイル」のキャスティングだが…
(たぶん)主人公である「森山未來」
ここでひとつだけ断りを入れさせてもらっておくと…
私は「森山未來」という役者は嫌いじゃ無い というか、むしろ好きな若手俳優の一人である。
が、この「スマイル」に関して苦言を述べる部分があるとすれば この「森山未來」が演じた青年の過去、特にタップダンスに関するエピソードは 結果的に全く必要が無いと私は思う。
と、同時に この「スマイル」を酷評する人々の意見の大半もそこにある。
問題は そのエピソードで激しくつまらなく感じるか、私の様に別の部分で感動し そんなものはどうでも良いと考えるか… そこが私の感想の違いだ。
で、主人公の婚約者に
「加藤ローサ」
「加藤ローサ」の父親でスケートリンクのオーナーに「モロ師岡」
この「モロ師岡」が見せる 一人娘の親父の様は 年頃の娘を二人持つ私に激しく共感を抱かせる。
さて、この映画には友情出演で
「松重豊」
얼레? 원래 이렇게 큰 사진이야?;;;
「塚本高史」
「玉木宏」達が出演しているが、中でも際立っているのが「寺島進」の存在だ。(後述する)
主人公である女の子「岡本杏理」は小学生ながら フィギュア選手として有望な素質の持ち主だったが…
主人公の男の子と知り合い、互いに惹かれ合うのと同時に白血病を発症し入院する。
主人公を含めて 病に倒れた女の子に好意を抱く弱小ホッケーチームの子供達は自分達が試合に勝ち進む事で それが女の子への励ましに繋がり、自分達の奇跡で女の子にも奇跡(回復)を起こそうと祈り勝ち進む
で、試合に勝つ毎に 女の子が入院している病室の外から夜中に大声でエールを送る子供達を病院の警備員(寺島進)が止めさせようとする。
しかしながら、子供達が勝ち進むのに対して女の子の病状は悪化し いつしか無菌室である別の病室へと移され いつもの様に勝利の報告と応援エールを送りに来た子供達は そんな女の子の状況を知らず、つい先日までの病室が無反応な事に途方に暮れ その様子から事情を察した警備員は態度を一変させ 女の子が移った病室の窓の外へと子供達を誘導する。
この警備員役に「寺島進」を起用したのは私にとって大いなる反則だ。
だって、この後のシーンで見せる寺島の様は 寺島ならではの味であり、寺島の持っている魅力を最大限に発揮させたシーンだと私は断言するからだ。
そして、このシーンにも 私はかつての倉本イズムを陣内が継承したと垣間見る。
それは「北の国から」の連続ドラマ版の終盤(23話だったと思う) 純と蛍が母親の葬式に出る為に東京に行き、母親の情夫である男(伊丹十三)から履いている靴がボロボロだからと新しい靴を買って貰う が、純と蛍は 靴屋で捨てられた靴は自分達の父親が泥だらけになって稼いだ金で買ってくれたもので愛着があり、後になって靴屋に行き、靴屋の前のゴミ捨て場を探している所を不審に思った警官(平田満)が問い質すシーン
この時の警官(平田満)が後に見せた様と、「スマイル」における警備員(寺島進)の様には いろんな意味で相通じるものがあり、どんなに私が頑固で偏屈なオッサンだからといって そんな私でありながら「こういう男でありたい」と願う人物像
ヤラレたよ陣内…
「北の国から」まで思い出しちゃって泣かされたよ。(ToT)
で、ついでにもうひとつ言えば
倉本聰の映画「時計 Adieu I'Hiver」は かつてフィギュアのオリンピック選手だった母親と 同じオリンピックに出場し知り合ったアイスホッケー選手だった父親との間に産まれたひとりの女の子がフィギュア選手として成長し… というのが、冒頭の概要である。
そう、ここでもフィギュアとアイスホッケーの合体 だからといって、陣内の「スマイル」が倉本のパクリでは一切無い。
むしろ、「時計」をはるかに超えたティストの作品だと私は感じている。
さて…
真の意味で「スマイル」の主人公の一人とも言える女の子が白血病に倒れる…という筋書きは このブログに集う「セカチュー症候群」の方々には ある種のアレルギーを生じさせるかもしれない。
しかし、そんな方々に 敢えて私は
「グダグダ言ってないで 騙されたと思って観ろ!」
と、言いたい。
観た上で「ブタネコの野郎に騙されたよ」と思うなら そう思ってくれても構わない。
しかしながら、たぶん ほんの僅かであっても 私と同じ様に何かが壊れ、セカチュー症候群がぶり返す方もおられると私は信じているし そんな方と私はあらためて熱く語り合いたいと思っている。
ちなみに、この女の子を演じた
「岡本杏理」という女の子は
「セクシーボイスアンドロボ」の最終話で「私は私」を貫く転校生を演じた子でもあったのね。^^
詳しくは「セクシ-ボイスアンドロボ 考」を御参照願うとして概要だけを言えば この岡本杏理という女の子が演じた役で私は二度惹き付けられた事になる。
ゆえに、この子の今後をじっくりと注目し眺めてみたいと思っている。
それと どうしても述べておかねば鳴らない事がある。
それは…
ファンの方には申し訳ないが 私は今まで「坂口憲二」という役者を好きになれずにいた。
その好きになれない理由についてはあえて述べずにおくが、この「スマイル」を観て 台詞無しの表情だけで良い演技が出来る男なんだな…と 認識が一変した。
で、勝手な想像で語らせて貰うと この演技を引き出したのは監督である「陣内孝則」の演出の妙だと私は思っている。
ゆえに、演出家としての「陣内孝則」を高く評価したいと思う理由のひとつでもある。
で、最後に…
「原田夏希」をもってくるキャスティングを私は最高に評価したい。
陣内よぉ、どうして 俺の個人的ないろんなツボを刺激しまくるのかね?
これじゃ、どんなに多くの人がクソ映画呼ばわりしようとも 少なくとも俺だけは未来永劫「この映画は傑作だ!」と言い張るぞ。