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タイガー&ドラゴン 第4話

塚本高史 2007. 11. 20. 23:38

タイガー&ドラゴン 第4話

『権助提灯』

オープニング、高座に上がるのはそば辰の辰夫(尾美としのり)!
出囃子は、やだねったらやだね♪『箱根八里の半次郎』!


「(五代目志ん生のモノマネで)
 え~。いっぱいの、お運びで、ありがとうございます。
 今の五代目志ん生で! ・・・若い人にはわかんないか。
 緊張しちゃうね~。う~ん。
 これ、カメラ?回ってんの?
 オィーッス。辰っちゃんです。御年四十です。バツイチです。
 え~。跡腐れない恋愛をしてくれる二十代前半の女性、
 募集しておりま~す。
 え~。
 私が贔屓にしている噺家で、林家亭小虎って~男がおりまして、
 こいつが二つ目になったんです。」


小虎(=虎児)(長瀬智也)は、兄弟子のどん吉(春風亭昇太)、
どんつく(星野源)、どんぶり(深水元基)、うどん(浅利陽介)
相手に落語の練習中。

「ストップ!『りんき(悋気)』って何だっけ?」と小虎。
「嫉妬。」「ヤキモチだよ。」と兄弟子。
「『せんき(疝気)』は?」
「下半身の病気!」「性病だよ。」
「だったらそう言えよ!性病は苦しいってよぉ!
 ・・・わかんねーよ・・・。」
兄弟子たちに苛立ちをついぶつける。

「二つ目って~のは前座と違って大勢いますからね、
 毎日高座があるって訳じゃない。
 すると、割り(給金)がもらえないんで、
 生活は前座の頃より厳しくなる。
 小虎の場合本業があるから心配はない訳ですが、
 二つ目の癖に高級車乗り回しているんですからね、困ったもんだ。」


夜の街、自分達のシマの売人を取り締まる虎児と銀次郎(塚本高史)。

ある日の昼間。
浅草を、虎児が運転する高級車が優雅に通り過ぎていく。
同じ道を、師匠の林家亭どん兵衛(西田敏行)が自転車を必死に漕ぐ。

純喫茶・よしこ。
オムライスを食べながら虎児が師匠に聞く。
「師匠はよ、なんで結婚したの?」
「どうしたんだよ、急に。」
「今、どん吉兄さんから夫婦の話教わっているんだけどさ、
 全然わからなくてよ。俺独身だし、12ん時両親自殺してっからら。」
悲しい表情になり自分の手を目に当てようとする師匠。
「別に泣かなくていいよ。教えてくれよ。夫婦って何だ?」
「夫婦ね。まぁあの。
 惚れたはれた、なんていうのはまぁ、一時的のことなんだけども、
 それがまぁ、永遠に思える時があるんだよ。
 で、やがて、子供が生まれる。自分の家族というものが出来る。
 何て言ったらいいのかなぁ。まぁ、無償の愛とでもいうのかなぁ。
(うつむいて頭を抱える虎児)
 泣いてるの?」
「泣いてねーよ。真面目に答えるんじゃねーよ!気持ち悪いなー。
 噺家がダラダラと落ちもね~話しやがってよ。
 大体あんた守れてもなければ幸せにも出来てねーじゃね~かよ。
 しょっちゅう女房泣かせてるじゃねーか。
 言うだけかよ!この言うだけ亭主が!」
師匠、ショック!涙をそっと拭う。

「こんな調子で、わびもさびも小虎には~通用しねえ。 
 つまり、噺家になる素質ゼロなんですが、
 どーも憎めね~んだな、これが。 
 あ!しまった。店開けなきゃ。
 じゃあね。今度蕎麦食べりに来てよ。すぐそこだから。
 ハイッ!タイガー&ドラゴン!」
舞台の袖に向かい
「これでいい?」


ドラゴンソーダ。
鏡に向かってファッションチェックする竜二(岡田准一)。
昼食から戻ったアルバイトのリサ(蒼井優)が声をかける。
「デートですか?」
「そんなんじゃねーよ。」
「何時に帰ってくるのかわかれば私店番してますよ。」
「いいっつーの。
 何時に帰ってくるかわかったらデートじゃね~だろう!」
そこへやって来たチビT(桐谷健太)。
竜二がデートに出かけると知り
「まさか、メグミちゃんじゃねーだろーな!?」
「そうだよ!悪いか!?」
にらみ合う二人。チビTは竜二をつま先から頭の上まで見たあと
「その格好で行くならいいよ。」と笑う。
「・・・どういう意味!?」
デートと聞かれ否定しながらもそれを認める返答に◎。(笑)
竜二君、やっとこぎ付けたデートが嬉しくてしょうがないんですね。


楽しみにしていたデートだが、メグミ(伊東美咲)はバスガイドの
代わりを見つけられず、竜二は一緒に東京タワーめぐり。
ごめんね、と謝るメグミに
「いいっすよ。俺東京タワー好きだし。 
 あくまで俺の中ではデートとしてカウントされてんすから。」
観光客が竜二にカメラを預け、メグミを連れていく。
「ごめんね。竜二君!」
「やっと名前覚えてくれた!」竜二、ガッツポーズ!
竜二、ヨカッタね~!!(笑)

銀次郎が出欠ハガキを振り分けている。
『中谷謙』と書かれた宛名が、組長(笑福亭鶴瓶)の名前と気付く虎児。
銀次郎いわく、大学のサークルのOB会の幹事をやるらしい。
「サークルって何?
 極道サークル?っーか、親父、大学出てたの?」
「暇だったら手伝ってくださいよ。」
「暇じゃねーよ。
 言っとくけどな、俺が寄席に出れないのは下手だからじゃねーぞ。
 二つ目だからだよ。
 普通2、3年かかる所を俺は4ヶ月で昇進しちゃったんだよ。
 要するに、上手すぎて出れね~んだよっ。」
「・・・はい。」
銀次郎は虎児の言葉に適当に返事をし、ハガキの振り分けに精を出す。

組長を乗せたベンツを運転しながら、竜二は流星会の若頭・日向
(宅間孝行)に聞く。
「どうですか、日向さん。新婚生活は?」
「すげ~いいよ。」
「やっぱあれですか?男モンのシャツとか着せちゃうんですか?」
「着せちゃうね~。
 今思ったんだが、男モンのシャツって~のはありゃ、
 女が着るもんだね。」
「何をしょうもないこと!」と組長。
その組長が居眠りしている時、竜二は組長の女関係を聞いてみる。
「かみさん死んで3年だから、妾の一人や二人いるだろうけど
 今更再婚ってーのも微妙だろうな。」と日向は答える。

「気持ちい~。」
フットマッサージを受けるメグミの表情にうっとりな竜二。
「ねーねー、竜二君って、落語しゃべれるの?」
「しゃべれるって・・・ ちょっとはね。」
「虎ちゃんと、どっちが上手?」
「聞いた事ねーもん。あの人の落語。」
すんごい下手だよ。でも説得力あるっていうか、
 なんか聞かなきゃいけないような気分になる。
 
 でも、すーーっごい下手!!
 ねー、竜二君も何かやってよ。
 メグミ、怖い饅頭しかしらないから。」
「俺はもーね、落語は封印したんだ。」
「封印?」
俺の場合、全く逆で、上手いけど説得力がないんですよ。
 ある時それに自分で気付いちゃって。
 でも1回上手くなったものを、元には戻せない。
 ・・・ダメだ、こんな話。つまんねーや。

「つまんなくないよ。
 メグミ、竜二君のこと、まだよく知らないから。」
その言葉を聞いた竜二、メグミから目が離せなくなる。
「何?」
「いや・・・俺もまだ目が馴れていないっつーか。
 油断すると見とれちゃって。」
「よく言われる!」
「・・・よく言われるんだ。」
「油断すると見とれちゃって」なんて上手い事言うな~。さすが噺家!
・・・と思ったら、よく言われると知り、竜二、ガックシ。(笑)


谷中家。
今晩の夕食は水炊き。
「早く食べましょうよ!」と言う虎児に
「ダメよ~。メグミちゃんが帰ってから。」とみんなが言う。
「おいおいおいおい!おかしくね~か!?
 俺が遅くなったっていつも先に食ってんじゃね~かよっ。
 つーかなんで毎晩あいつここに帰ってくるんだよ。」
「おいお前!ハンサム馬鹿!
 お前メグミちゃんと付き合ってるのかい?」とどん太(阿部サダヲ)。
「付き合ってねーよ。アフロ馬鹿!」
「私も前から聞こうと思ってたの。
 どういうつもりなの?同じ部屋に寝てるのに布団別々だし
 手も握んないのよ、気持ち悪い!」とどん太の嫁・鶴子(猫背椿)。
一同、「え~~~!?」
「覗いてんのかよ!?」と虎児。
「覗いてますよ~!毎晩じんじりしながら覗いてますよ!
 寝不足よっ!!」
「小虎、そういうハッキリしないの、母さん嫌い。」と小百合(銀粉蝶)。
小百合にまでそう言われ、師匠に助けを求める虎児。だが師匠、
「はっはぁ~。そうか。それで結婚がどーとか言ってたんだ。」
「あれは落語の勉強の為にね、」
「落語をダシにテメーのどす黒い欲望を満たそうって訳だ。
 この外道!二つ目のくせによっ!
 あっ!私も二つ目だ。あぁ悔しい。
 早く真打になってお前を殴りたい!」とどん太。

「ってかもう、帰ってこないかもしんね~な~。
 言ってやったんだよ、『二度と来るんじゃねー』って。」
思わずお玉を振り上げ、虎児に一瞬だけはむかう師匠。
そして、シクシク泣き始める一同。
「オイ嘘だよ!全員で泣くんじゃね~よ、みっともね~な!!」

竜二とメグミがデートから戻ってきた。
「ここでいいよ。私こっちだから。バイバイ!」
「いや、俺もこっち。
 ・・・あれ?あれあれ??」
メグミが自分の実家に入っていくのに驚く竜二。

「メグミちゃんは我々家族のマスコット。 
 だからね、メグミちゃんがもし、彼氏でも連れてこようものなら
 この林家亭一門は、っというか家族は、 
 悋気の火の玉となって、立ち向かっていく訳だからね。」
師匠がそう言っている間に
「たっだいま~♪」とメグミが玄関のドアを開ける。
大喜びで出迎える師匠とどん太。
二人より遅れて玄関に向かった虎児、二人の殺気立った姿に気付く。
「ぶぉはっ!」
二人の視線の先には、メグミと一緒にいる竜二。
「状況が把握出来ないんだけど・・・。」
とまどう竜二。
睨む師匠とどん太。
「あ、あがれば。」と虎児。

「言いたいことがあるんならはっきり言えよ!」竜二が切り出す。
「いや、あのね、だからね。
 メグミちゃんはね、私はもう娘のように可愛がっているんだよ。
 一方、お前は、もうほとんど息子じゃねーんだよ。
 借金完済したらもう他人だよ。
 そのことを踏まえて言わせてもらうよ。
 お前のような男にな、可愛い娘はやれません!以上だ!」
「結婚の挨拶に来たんじゃねーし。
 つーかさ、同棲してんなら言ってくれよっ。
 こっちは送ってる時点で100パー決める気なんだから。」

小百合たちは、メグミに竜二と虎児のどちらが好きなのか聞いてみる。
が、メグミ、口の中の食べ物のせいで何言ってるかわからず!
すかさずツッコミを入れる鶴子。それを誉めるどん太。

「みんな、メグミのこと誤解しているみたいだな。 
 言っとくけどこいつ、バツイチなんだよ。 
 青森にダンナ置いて逃げてきてよ、
 キャバクラで務めて男を次から次へと騙して、
 もうこれが酷い女なんだ。
 それを更生させたのが、竜二。」
虎児に言われて肌に入れたタトゥーをみんなに見せる竜二。
「あんた!」と小百合。
「オメ~も見せろ!」
虎児に言われ、メグミも自分のタトゥーを見せる。
「オメ~は見すぎなんだよっ。」
虎児に注意される師匠。
「わかったかよ。生半可な気持ちで付き合ってるんじゃねーんだよ。
 真剣なんだよっ!
 そんでも言いて~ことがあるんだったら聞こうじゃねーか。」
一同、し~ん。

どん太は場の空気を替えようと試みるが、その時小百合が泣いている事に
気付く。
「やばいぞ竜二。小百合ちゃんが泣いている。」
エプロンを目に当てて涙する小百合。
「あっ!
 お前親から貰った身体に何したんだ、てめ~は!」と師匠。
「さっき他人って言ったじゃねーか。」
師匠に追われ、竜二は実家から逃げ出していく。

寄席のあと、虎児が師匠に連れていかれた場所はとあるバー。
店に入る前、師匠が言う。
「あの、いずれ話そうと思っていたんだけど、
 今夜の事は、お前のアニさんたちとか、もちろん、小百合さんとか、
 い、い、言うなよ。お前と、俺の、し・・・秘密な。」

店に入ると、水越小春(森下愛子)が師匠に抱きついて出迎える。
おぉ!森下愛子さん!!池袋WGPではお母さん役でした。

師匠は小虎に小春を『僕の、カノジョ』と紹介する。
「よろしゅう。正吉さんの京都妻どす。」
それを聞き、店の外へ出ようとする虎児。師匠が引き止めると
「重いよ。重すぎるよ。何で俺に愛人なんか紹介するんだよ!」
だが師匠と小春は『超・プラトニックな関係』と主張。
「余計重いよっ!
 あーダメだ。誰かにしゃべりてぇ。でも面白くしゃべる自信がねー。」
「大丈夫だよ。僕が面白く話すから。」と師匠。
「『僕』とか言ってる時点でもう面白いんだけど。」
「あれはね、僕が大学4年の時だから、
 うそ~。もう30年も前になるんじゃん!」

30年前。明應大学。
大学4年生の正吉が白いギターをかき鳴らし歌う。

「当時、ケンちゃんは僕の親友だったんだ。
 落研の部長・副部長でね。
 付属高校の、落語クラブの指導を任されていたんだよ。」

「正ちゃん!正ちゃーん!」
「なんだよケンちゃん、うるさいよ。」
「来だで~!付属の女の子達が来よったで~!」
「よろしくご指導お願いいたします、先輩!」


「小春ちゃんはクラブに入りたての一年生でさ、
 いやぁ、可愛かった~!」

「正ちゃんは、小春のことをどない思ってるね。」
「そりゃ、可愛いとは思うけど。でも16だぜ、犯罪だよ。」
「ナンセンスや!16が犯罪やったらわしゃ犯罪者になる!
 なったるやないけ~!」
 ・・・
 小春ちゃんの気持ち、確かめてくれへんか?」


「ケンちゃんが書いたラブレターを、僕が渡しに行ったんだよね。」

「ごめんなさい。私、好きな人がいるんです。」
「まさか・・・僕?」
頷く小春。
「そりゃマズいよ。まずいよ、小春ちゃん。」
そう言いつつも嬉しそうな正吉。
小春はそんな正吉に後ろから抱きつく。
二人のそんな様子を見ていたケンちゃん、悔しそうに走り去る。
「ケンちゃーーーん!」ケンちゃんを追う正吉。

「違うよ、ケンちゃん、ちょっと待ってよ!」
そう言う正吉にケンちゃんのパンチが飛ぶ。
思わず殴り返す正吉。
「正ちゃんよりもな~、ワシの方が何倍も何倍も好きなんや~。」
「俺だって、小春ちゃんのことが好きなんだよ!」
二人はつかみ合い、そのまま川原を転げ落ちる。


「あの頃の僕らは若かったからね~。
 噺家としてはもちろん、男としても自分が一番だと思ってたから、
 絶対譲りたくなかったんだ~。
 しょっちゅうぶつかり合ってたよ~。
 でも不思議と馬が合ったんだよね~。」

仲直りの握手をし、肩を組み、笑いながら歩き出す二人。


「まぁさしずめ、昭和の、タイガー&ドラゴンってとこかな。」

「正ちゃん卒業してすぐ弟子入りしてどん兵衛になったけど、
 ケンちゃんは私が入学するまで、留年したんだよね~。」
「そうそう。
 『ワイは小春ちゃんのこと待ってるんや~』とか言ってね。
 大学8年生まで待ってたんじゃないか?
 僕は僕で、小春ちゃんのことを諦めようと思って、
 コウタロウ師匠の娘さんと付き合っていたんだけども。
 それが今の、小百合ちゃんなんだけどね。
 僕はてっきり、ケンちゃんと小春ちゃんは一緒になるもんだと
 思ってたからさ~。」
「もういいじゃない、昔の話よ。それよりどうするの、同窓会?」
「あ・・・行かないっていうか行けない。」
「え~。3人で会えるの楽しみにしてきたのに。」
「あの頃とはもう・・・違うんだよ。借金もあるし。」
「もう・・・正ちゃん、かわいそう。」
師匠は小春の肩に頭を乗せ、甘える。

「何だその笑顔!
 っーかよ、さっきっからケンちゃんケンちゃんって言ってっけどよ、
 そのケンちゃんっつーのは俺の知ってるケンちゃんじゃねーよな?」
「実は・・・あんたんとこの組長だよ。
 だから、いずれお前が」師匠の言葉を遮り掴みかかる虎児。
「うちのオヤジが落研部だったのかよ!?」
組長も落語が出来ると知った虎児、
「オヤジが落語出来るんだったら何もあんたに弟子入りする必要
 なかったじゃねーかよ!
 オヤジから落語教えてもらえば良かったじゃねーかよっ!
 ・・・
 何やってんだ、俺は。
 俺は何やってんだよーっ!
 ヴォッホー!・・・ヴォッホー!」
自分に腹を立てて、虎児は店を出ていく。

その頃、組長は欠席と印の付いた正吉のハガキを投げ捨て、
『お会い出来るのを楽しみにしています。』と書かれた小春のハガキに
「ワシもやで、小春ちゃん。」と呟く。

ドラゴンソーダ。
竜二や他の兄弟子たちも小春の事を知っていると知り、少しほっとする
虎児。
竜二はチビTからもらった『CLUB YO-SE』と書かれたチラシを竜二に見せる。
「淡島じゃん!!」

そのクラブに訪れる虎児と竜二。
「CLUB YO-SE、大トリの登場だYO!!」
アルバイトを引き受けたらしいどん太がギャグを飛ばしながら進行を
進める。
ジャンプ亭ジャンプ登場!

「りんき(悋気)は女のつつしむ所と申しますが、
 やきもちにも色々ございまして・・・」


「おいおいおい!こんなざわついたところで古典やるのかよ!」
虎児の心配をよそに、淡島の落語が始まる。

「なかには、爪を研いで待ってるなんて、危険性を帯びたのがおりまして、
 アンチクショーっ!帰ってきてみやがれ。
 どうしてくれようか。こうしてくれる!
 キーーーーッ!!」

会場、大笑い!
「うけてるよ!」と虎児。

「そうかと思えば、全く焼かない女性も中にはおりまして、」

「権助提灯だ。」と竜二。

「こりゃいいってんで遠く離れない横丁の先に、
 お気に入りの女を囲います。2号さんね。
 これがまた、ヤキモチが嫌い。
 本妻が焼かない、お妾が焼かないってんですから
 家族は円満。」

「あぁ、だいぶ風が出てきたようだなぁ。
 火事にでもならなければいいが。」と亭主(正吉)。
「旦那様、うちは大勢若い者がおりますから、火事になっても
 充分手が回るだろうと、私、考えております。
 横丁のあの娘の方は、女中と二人きり。
 旦那様が、これからあちらにお出かけになって、
 お泊りになってあげたら、安心して休む事が出来やしないかと、
 かように考えております。」と本妻(小百合)。
「いやいや、これは、恐れ入りました。
 お前さんの腹の大きいのには実に感心しますなぁ。
 では、さっそく、さっそく出かけてみるか。
 ついては夜道だ。提灯付けさせて供を付けたいが、
 誰かおるかな?」
「田舎者の飯炊きが、起きております。」
「権助か?あれはよそう。あれは、」
あくびをしながら権助(淡島)登場。
「なんだ?何見てんだ!?」
「まぁいいか。出かけるからね、支度をね、」
「あんれま、よせばいいんじゃねーの?
 こんな夜更けに出かけるバカがどこにいる?」


観客、大笑い!
「虎児さん、俺、先に帰りますね。」
竜二の声も耳に入らず、虎児は淡島の古典に釘付け。

「いいから提灯付けろよ。」
「へ~~い。」
「お~~い。ちょっくら起きろ、アマっ子~。
 起きろってばよ~~。」


「あっはっはっは!」虎児、大爆笑!そして舌なめずり。


谷中家。
「起きろ!起きろ!!師匠ー!!」
「な、なんだよ、まだ3時半じゃないか、まだ。」
「明日の高座、あれやってくれ。提灯のやつ。」
「提灯?」
「田舎モンが出てきて、ほら、」
「あれ、権助提灯か。」
「権助提灯やってくれよ。 
 淡島がやってるの見たんだよ。すっげー面白かったんだよ。
 若者がよ、おぃ寝るんじゃねーよ。
 若者がどっかんどっかんウケてるんだよ。
 それを俺は、師匠と小百合ちゃんと小春ちゃんでやろうと
 思ってるんだよ。」
「ちょっちょっちょっちょ!」慌てて飛び起きる師匠。
「だから!明日の高座で『権助提灯』やれよ、絶対に。
 もしやんなかったら、この間のこと小百合ちゃんにバラすぞ!」
「おめ~ってヤツは・・・」
正吉の隣には、二人のやり取りに気付かずに小百合が寝息を立てていた。

翌日。高座に上がるどん兵衛

「ドンドンドンドン。
 起きろ~、あまっ子~。起きろ~。」
ドアを開ける妾の女(小春)。
「あら~。どうなさいました?」
「いや、家内が言うには、この風でお前が大変心細い思いを
 しているだろうから、あなたが行って一緒に泊まってあげれば
 お前も安心して寝れるんじゃないだろうかと。」
「まぁ奥様が!?嬉しいじゃありませんか!
 大抵の奥様は旦那様をよそに出したがらないというのに、
 もうそのお心遣いだけで充分です。
 ここでさようでございますか、とお泊めしますと、 
 あんまり物を知らない女だということになりまして、
 奥様に会わす顔がございません。 
 お泊めしたいところですが、どうか本宅にお帰りなすって。」
「えぇ・・・え、あそうか。いやあなるほど、よくわかった。
 権助。」
「へ~い。」
「権助。」
「へ~い。」
「提灯付けろ。」

「えれ~こった。おかみさんのとこで寝べ~とすると邪魔にされ、
 そんでまた、お妾さんのとこで寝べ~と思えば邪魔にされるな~。
 旦那さん、とんだ宿無しやろーだ。」


客席、大爆笑。虎児も手を叩き大笑い。

「まあ、お早いじゃありませんか。
 あの娘のところの方へは行かなかったんですか?」
「いや行ったんだがな。
 お前がこれこれこう言ったから泊まりに来たと言ったらな、
 まぁたいそうあの娘も喜んでな、
 喜んだんだが、まあ、このまま旦那様をお泊めしたらば、
 奥様に会わせる顔がないと言うことでな、帰ってきた。
 ただいま。」
「まぁ、感心じゃありませんか~。
 だったらなおの事、今晩、こちらにお泊めする訳には参りません。
 旦那様、どうぞ、あの娘の方へ、おいであそばせ。」
「権助~。」
「へ~い。」
「提灯付けろ。」
「へっへ。消さね~で待ってた~。」
「ばかやろう。家には明かりがあるだろう。
 一つで用が足りる所を二つもつけておけば、
 一つは無駄になるってもんだ。」
「そうすっとおめ~さんは、ずいぶんと無駄があるな~。」
「な~に~~~!」
「かみさんなんて一人いりゃ~用が足りるべ。
 してみりゃ~お妾さんなんて無駄なもんだ。
 お妾さんおっぺしてロウソク買ってみなせぇ。
 どんだけまぁ提灯付けられるかわからねえべ。」

会場、大爆笑!
「本当に、その通りだよ~。」なぜか一人泣き出す辰夫。

「トントントントン。
 おい、又来たぞ~。あまっ子。あまっ子。」
「まぁ、度々ご苦労様。どうなすったの?」
「お前の言う通り家内に話したんだ。
 家内はえらく感心してな、お前はえらいと。
 えらいんだが、泊められないから、お前の所へ行って、
 泊まってあげなさいとまぁこういう訳でまた来た。」
「まぁ、涙が出るようですわ。
 そう度々おっしゃって下さるんでしたらお泊めしたいんですが、
 おっしゃられます程だんだん泊めにくくなりまして、
 今晩はどーしてもお泊め申すことは出来ません。
 どうぞ、本宅へお帰り。」
「又・・・帰りますか?
 おい権助。」
「へ~い。」
「提灯を付けろ。」
「へへへ。旦那さん。提灯には及ばね~。」
「どうしてだ?」
「もう、夜が明けた。」


観客席から拍手の嵐。
「よっ!どんちゃん最高!あんたやっぱ最高だよっ!」
虎児が立ち上がって拍手を贈る。


「オヤジさん、今日の帰りは何時位ですか?」虎児が組長に聞く。
「今日はえ~のや。
 何時に終わるかわかってたら、同窓会ちゃうやろ~。」
リサ&竜二と同じセリフ!
上機嫌の組長。
「大体終わる頃に車回しておきますんで。」
「えぇっちゅーの。にぶいやっちゃな~。
 ・・・
 まぁええわ。お前にはいずれ話しよう思ってたんや。
 ワシと正ちゃんの話。 当時正ちゃんは、」
今度は秘密を打ち明ける師匠と同じ展開!

30年前。明應大学。
大学4年生の正吉謙が白いギターをかき鳴らし歌う。

「当時、ケン正ちゃんは僕の親友やった。
 落研の部長・副部長でな。
 付属高校の、落語クラブの指導を任されていたんや。」

謙ちゃん!謙ちゃーん!」
「なんやねケン正ちゃん、うるさいよ。」
「来だぞ~!付属の女の子達が来たぞ~!」
「よろしくご指導お願いいたします、先輩!」


「小春ちゃんはクラブに入りたての一年生で、
 いやぁ、可愛かった~!」

謙ちゃんは、小春ちゃんのことをどう思ってるの?」
「そりゃ、可愛いとは思うけど。16やで、犯罪やがな。」
「ナンセンス!16が犯罪だったら僕は犯罪者になる!
 なってやるぞ!」
 ・・・
 小春ちゃんの気持ち、確かめてくれないか?」


ケン正ちゃんが書いたラブレターを、ワシが」
「ストーーップ!」組長の話を急に止める虎児。
「なんや?」
「すみません。師匠から聞いた話と微妙に違うんで。 
 微妙にっつーかかなり!
 師匠の話じゃ、小春さんに惚れたのはオヤジさんの方で、
 オヤジさんの書いた手紙を師匠が」
「止めろ!車を止めろっつーてんのや!!」虎児、急ブレーキ!
「正ちゃん、小春に会うとんのやな?正直に言え!!」
「会ってません、会ってません。」
「ほな、なんでお前に小春の話なんかするのやコラァ!」
「よ、よっぽど話すことがなかったんでしょうね。」
「ほ~。ほんだら正ちゃんにとって小春は、よっぽど話することが
 ない時に話題に上る程度の女かぁ!
 その程度の女に、白タキ新調して会いに行く俺はどうなるねん!
 小虎、しようもない男やのぉワシは・・・。」
「すいませんでした。会いに行きました。
 師匠と一緒に、小春さんに会いにいきました。」
「なんやと・・・。
 あいつ小春と続いていたんやな!
 UターンせぃUターン!ご欠席や、ご欠席や!何がOB会だ~!」

谷中家に1本の電話。
「え~!?謙ちゃん来ない?だって小春」(小百合ちゃんが横切る)
「・・・小春日和の日にね、同窓会やりたいって言うんだからね。
 幹事が来ないっていうのはおかしいじゃないの。
 ちゃんとあなたから説得してよ。なぁ、渋沢君。」

虎児は運転しながら後部座席で目を閉じたままの組長を見つめる。

おでん屋。
「この通りだー!!」土下座をして師匠に頭を下げる虎児。
「よりによって謙ちゃんにしゃべるとはなぁ。」
「だ、だって言っちゃいけないリストの中にオヤジ入って
 なかったじゃねーかよ。」
「言わずもがなってことがあるだろう?汲み取っておくれよ~。」
「・・・(土下座をやめて師匠の隣に座りながら)
 大体よ、若いとき何があったか知んね~けどよ、
 俺に言わせればいつまで引きずってんだよって話だよ。」
「お前さん、人間わかってね~な~。
 古典落語なんてものね、全て人間を描いているんだよ
 人間知らなきゃ、古典落語なんて出来ねーんだよ。
 お前さんがた若いもんはさ、年取ったら人間は丸くなるものだと
 思っているんだろう?冗談じゃねーよ。
 人間なんてものはね、生きているうちは後悔の連続。
 しかも身体は老いてくる。時間はどんどん減ってく。
 もう、丸いのは外ッ側だけだよ。
 中身はもうそれこそ、ガタガタだよ、この隕石みたいに。」
おでんのジャガイモを串に刺して師匠が言う。
「隕石じゃね~よ、ジャガイモだよ~。」とおでん屋の半蔵(半海一晃)。
「もっと具体的に言ってくんねーかな?」
「大学を出てから、謙ちゃんは、
 一回も小春ちゃんに会ってねーんだよ。
 噺家になる道諦めて、で、コッチの方になった訳でしょ?
 だから相当覚悟がいったんじゃないかな。
 自分の結婚式にも、小春ちゃんだけは呼ばなかったし。
 一昨年だったかな、小春ちゃんの旦那さんが亡くなったんだよね、
 葬式にも、花だけ出して顔を出してないからね。」
小春は20も違う大学教授追っかけて京都まで行ったらしい。
「じゃあ付き合っちゃえばいいじゃん!オヤジも独身なんだから!」
「ハハハハハ。わかっちゃいねーな~。人間ってのはね、!!」
「・・・なんだよ。」
「付き合っちゃえばいいのか!!付き合っちゃえばいいんじゃん!
 あぁそうか!お前さん人間わかってんじゃね~かよ!」

高座に上がる小虎。

「え~。悋気(りんき)は女のつつしむ所と」

「待ってました!権助提灯!」辰夫が観客席から声をかける。
「ちげ~よっ!」小虎、辰夫を睨む。

「え~。やきもちなんてもんは女の専売特許と思われがちですが
 男だって焼くんです。
 まあなかでも50過ぎた男のヤキモチなんてもんは、
 ほっぽらかしといた石焼ビビンバぐらい頂けないものでして。
 
 え~。正吉と謙という親友同士がおりまして、」

舞台の袖から「よしとくれよ~。本名かよ!」と師匠。

「これがもう、揃いも揃って大人げのない野郎で、
 30年前に取り合った女、小春を巡ってもめにもめております。
 しかしいつまでももめていたんじゃ埒があかない。
 何とか和解しようと、正吉が策を練りまして。
 奉公人である権助を使いに出します。」

「なんだい!やっぱり『権助提灯』じゃね~か。」と辰夫。

OB会が終わるのを車で待つ虎児。
元同級生たちに抱えられ、小春が会場から出てきた。
「あ~~~!!こーとーらーちゃーーーん!!」
虎児に抱きつく小春。

「小春って女は少々酒乱の気がありまして、
 まぁだけどそんなことは気にしていられないってんでね、
 とにかく車に乗せまして。」


おでん屋で待つ師匠の元へ行く虎児。
「いいかい。
 責任を持って八王子の謙ちゃんの所まで送り届けるんだよ。」
「おぉ、師匠はいいのかよ。あんただって小春さんのことを・・・」
「何言ってるんだよ。私にはね、小百合ちゃんもいます。
 家族も可愛い弟子たちもいます。
 それに比べたら謙ちゃんは、子供はいるけど、一人身だよ。
 とくに今夜は寂しい思いをしていると思うよ。頼むよ。ね。」

車を走り出し、後部座席の小春に虎児が言う。
「・・・という訳で、今夜は組長の家に泊まってもらう。」
ところが道路は工事中。
「もう道わかんねーよ!!」
「ナビ付けたら?ヒック!」

「小春は権助に提灯を付けさせまして、道に迷いながらなんとか
 謙ちゃんの屋敷にたどり着きました。
 ドンドンドンドンドン、謙ちゃん!
 ドンドンドンドンドン、謙ちゃん!」


「正ちゃんが確かにそう言ったんやな。」と組長。
「はい。」
「ふっ。粋なマネしやがって。」
「じゃ車の中で待たせているんで連れてきます。」
「あかん!先に惚れたのは正ちゃんや。
 ここで小春泊めたら、正ちゃんに会わす顔がない。
 せやから泊める訳にはいかんのや。」
「・・・わかりやした。」
「おぅ!待て~。どんちゃんの家まで送っていくんや。
 ワシがそうせい言うたと伝えろ。」

「謙ちゃんがそう言ったのね。
 正ちゃんのお家に、連れてってちょうだい!」と小春。

「っていう訳で、また権助に提灯(ナビ)をつけさせまして、
 今度は浅草にあります正吉の家に向かいました。
 ドンドンドンドン、正吉~!
 ドンドンドンドン、起きろ正吉~!」


「と、泊める?お前それで小春連れてきたのか?」
「おぅ。車で待ってる。今連れてくるから。」
「だ、ダメ~!!
 小百合ちゃんにどうやって説明するんだよ。」
「・・・だよな。泊める訳にはいかねーよな。」
「ラブレター書いたのは謙ちゃんなんだからね。
 ここで泊めたら又同じ事になっちゃうんだからね。
 謙ちゃんに会わせる顔がなくなっちゃうんだからね。」
「あ!小百合ちゃん!・・・嘘だよ。」師匠に意地悪を言う虎児。

仕方なく車に戻る虎児。
「何だって?」小春が尋ねる。
「詳しい事はあとで話すけど、とにかく組長の所に行ってくれって。」
ナビ、スイッチ・オン!

「ったくよ~。組長だの師匠だの、いいご身分だよな。
 おんなじ人間なのにどうしてこうも違うかね。
 次、生まれ変わったら師匠か組長に生まれんべ。
 弟子や構成員じゃダメだ~。」

「なんだか話がリアル過ぎね~か~?」と半蔵。

組長の家の前。小春が車から飛び出していく。
「私が直接会って、交渉するー!」
慌てて小春を追う虎児。

「あの。親父は手紙を書いた覚えなどないそうです。」
銀次郎が応対に出る。
「うっそー。確かに、貰ったもーん。ほら。」
「なんだ持ってるんだ。見してみろ。」
「だめ!!絶対にだめ!!」
「とにかく今夜は何があっても泊める事は出来ませんので、
 お引取り下さい。」小春に頭を下げる銀次郎。
「行くわよ、小虎!」そう言い小春は車に戻っていく。

「アニキ!すみません、親父頑固だから。」と言う銀次郎に
「っーか運転変わってくんないかな。 
 もう回り道回り道で疲れちったよ。」

「でもあんた、謙ちゃんに似なくて本当によかったわね。」
助手席に座った小春が運転席の銀次郎に話しかける。
「ハハ。よく言われます。」
「お母さんが綺麗な方だったのかしら。」
「いや、そうでもね~っす。」
「どうしてそんなに綺麗な顔してんの。ちょっと触らせて~!」
「ちょっと危ないっす危ないっす。」
後ろに座る虎児が尋ねる。
「おばちゃんおばちゃん!
 さっきの本当にオヤジが書いた手紙なのかよ。」
「忘れた~。
 忘れたから確かめたくて、行ったり来たりしてるんでしょうよ!」

谷中家。応対に出たのは小百合!
「あら!誰かと思ったら小春さんじゃないの!」
「夜分にすみませんね~どうも!」
「・・・なんだよ、顔見知りじゃねーかよ!」と驚く虎児。
「ちょくちょく電話で話してるもん!」と小春。
「どんちゃんには内緒でね~!」と小百合。
どん太、鶴子、そして竜二も、小春に親しげに話しかける。
「お前『家の敷居はまたぐな』って言われたばかりじゃ
 ねーのかよ。」虎児が竜二に言う。
「電話したら親父がいないっていうからチャンスだ~と思って
 飯だけ食いにきたんだよな~!」と竜二。

虎児たちは、正吉のいるそば辰へ。
「だから何度も言ってるじゃないかよ。
 謙ちゃんだよ。謙ちゃんが、小春ちゃんにラブレターを書いたの。
 俺はそれを小春ちゃんに渡しただけ。」
「私もそんな気がするんだけど。」と小春。
「だけど親父は書いてねーって言ってるんだよ~。」と銀次郎。
「知らねーよ。んなこともう。
 いや、もしね、万が一、私が書いたにしてもよ、
 息子の前でこういう話、やめようよ。
 勘弁してくれよ~。」泣きが入る正吉。
「書いたのか書いてねーのか、どっちだよ!」と竜二。
「どっちだっていいじゃね~か。30年も前の話なんだろ。」と辰夫。
「よくないよーっ!!」と銀次郎・虎児・竜二・小春。

「あなたも正ちゃんに似なくて、本当によかったわね。」
助手席の小春が運転席の竜二に話しかける。
「よく言われます。アニキは似ちゃったんですけどね~。」
「なんでお前付いてきたの?」と虎児。
「なんか面白そうじゃないっすか。」

一行、組長の自宅へ。
組長は鍵をかけて出てこない。銀次郎も鍵を持っていないらしい。
玄関のインターホンでは
「正ちゃんや。正ちゃんが書いたんや!」と組長が小春に言っている。
「正ちゃんは、謙ちゃんが書いたって言っているのよ。」小春が叫ぶ。
「違う~!帰れ!帰ってくれ! 
 ・・・ワシを一人にしてくれ。」
そう言い、インターホンは切れてしまう。

行き止まりの標識。
「何やってんだお前!?」「完全にグリーン乗っちゃってるよ。」
虎児と銀次郎は運転する竜二に言う。
「すいません。同じ道も飽きたかな~と思って軽いアドリブのつもりが
 裏目裏目でハッハッハ・・・。」
後部座席の小春は疲れて眠っていた。

3人は車から降りて一服する。
「ったくよ~。俺達は何やってんだよ。
 おっさん二人に振り回されて。」と虎児。
「アニキ、ヤキモチとか焼かないっすもんね。」銀次郎が言う。
「いやそんなことねーよ。
 俺はこの間こいつがメグミとデートしたって聞いたときに
 軽くイラっときたもん。」
「まじっすか?」と竜二。
「軽くな、軽く。でも、初ジェラシーだよ。」
「うわ、なんか、嬉しい。」
「嬉しいって何だよ!」
「だって、何とも思われなかったらそれはそれで癪じゃないっすか。
 俺は小虎さんがメグミちゃんとホテルから出てきた時
 相当イラっとしたっすよ。」
「それは謝ったじゃね~か。」
「謝るとか、そういう問題じゃないっすよ、なぁ。」
銀次郎に話をふる竜二。
「つーか、今俺メチャメチャいらいらしてんすけど。
 ホテルとかデートとか聞いてねーし、俺。
 初耳!初耳っすよ!」
「何でお前に言わなきゃいけねーの?」と虎児。
「か~。うわ~。もともとメグミちゃんは俺が見つけたんですよ。」
「いいじゃね~か、お前、リサと付き合ってんだから。」
「そういう問題じゃね~よ!
 何これ、何その連帯感!?
 だってさ、俺達は、タイガー&ドラゴン&シルバーじゃねーのかよ。」
「シルバーは生きものじゃなくて、色だろ!」と竜二。
「つか、すげーこと言っていい?
 小春っておばちゃんとメグミが被るんだけど。
 テンションとか自分勝手な感じとか。
 俺らもあれかな、年取ったらどっちがホテル行ったか
 わかんなくなるのかな。」虎児が言う。
「それはねぇ!」と竜二。
「ごめん!」と虎児。

車に戻った3人。
「この人のためにこれだけがんばったんだから。」
3人は小春が持っていた手紙に手を伸ばす。
もし差出人が師匠だったら帰りの運転は竜二。組長だったら銀次郎。
緊張して封筒を裏返す・・・。差出人の名前はない。
次に中の便箋を取り出す。折りたたまれた手紙を開いてみると・・・
『ずっと30年後の今日も、あなたを変わらず愛しています。
 中谷中』
・・・文字がくっついてしまい、
谷中とも中谷とも読めるのだった。
ぶぉっほ!
こんな落ち、ここに来るまで全然気付きませんでした!
だから組長の名前は今日まで伏せてあったんですね。


「どっちだよーっ!!」
「じゃ、俺が運転するよ。」と虎児。
「だいじょうぶっすか?ナビもこれじゃ使えねーし。」
「もう、ナビなんかいらないわよ。」
いつから起きていたのか小春が言う。
「ほら。」
「うわ。」「眩しい!」

「ハハハ。夜が明けた。」

噺が終わりお辞儀をしても、し~んと静まり返ったままの客席。
小虎、一瞬考えたあと、
「あっ!!
 タイガータイガーじれっタイガー!」

観客、拍手喝さい。「タイガータイガー!」と声が飛ぶ。
客席から小春もVサインで笑顔を見せた。

純喫茶よしこ。
カレーライスを運ぶよしこ。
師匠と虎児はまた、オムライスを注文。
「いやぁ、今度は実名出されて、もし受けなかったら波紋だな~と
 思ってた。悔しいけどおもしろかったよ。」と師匠。
「いや、まぁ。(ご機嫌の虎児)じゃあ、今月分の授業料を。」
「それじゃ、今月分のご返済、ということで。」
「てめぇ何一枚抜いてんだよっ!」
「は~。わかるんだ~。
 いや~、いろいろネタ提供したんで、これ位いいかな~と思って。」
「てめ~ふざけんじゃねーぞ!」
「ごめんなさい。これは謙ちゃんのお金だからね。」
「おぅ!」
「あ~、あの、あのさ、手紙さ、ラブレター、
 あれどう考えても私書いた覚えないんだけどなぁ。」
「もういいじゃねーかよ!」
「はい。」

東京駅に向かって歩く小春。
その横を一台の車が止まる。組長だ。
「また、来る事があったら正ちゃんじゃなしにワシに連絡して。」
「うん。」
「それからな、まぁええわ。
 30年後の今日は過ぎたけど、俺やっぱり、小春ちゃんのこと
 好きやったんやな~思うて。」
「謙ちゃん・・・。」
「車出せ!」
「やっぱり、謙ちゃんだったんだ~。」
「出せ!!!」
運転席の虎児が車を出す。

「は~。それぐらい覚えといとくれっつーねん。」



師匠の正吉と組長の謙の過去には、そんなことがあったんですね。
組長の純情さがヨカッタ!

そして、提灯がナビになるとは!
なるほどなぁと、私、唸りました。(笑)

古典落語・権助提灯ですが、最初妻達は男を邪魔にしているのかと
思いきや、そうではなくて、女同士の意地の張り合いってことなのかな。
なんだか面白いお話です。
『二兎を追うもの一兎を獲ず』
旦那さんにお説教する権助の言葉がまた、的を得ていて面白かったです。


それと、メグミってすごいですね!
虎児の落語をしっかりとわかっている上に、
竜二の落語封印の理由まで聞きだしてしまいました。

竜二は自分の落語の才能をきちんと分析し、そしてスランプに
陥った。
先週ジャンプ亭ジャンプこと淡島ゆきお(荒川良々)が言っていた
「伸び悩み」発言に繋がるんですね。
竜二には、落語の世界に超えなければならない壁があるようです。

自分の内をあまり語らない竜二ですが、大好きなメグミちゃんには
素直になれるんですね。

前回、ファッションの世界で頑張って欲しいと思いましたが、
そういう理由で落語の世界と決別したのであれば、もう一度
チャレンジして、説得力のある噺に挑戦してほしいです。

虎児とメグミと竜二の三角関係もどうなっていくのか気になります。
竜二とメグミのデートにイラっとしたと、虎児。
でも竜二の真剣な気持ちを家族達に訴えていました。
いいトコありますね。

今日はお約束の封筒のセリフがありませんでした。
何気に楽しみにしている私。次週はあるかな!?



【落語のあらすじ500】さまの 権助提灯
リンクさせていただきます。
【うんちく】まであり、これが又面白いです。