대본

タイガー&ドラゴン 第7話

塚本高史 2007. 11. 20. 23:48

タイガー&ドラゴン 第7話

『猫の皿』

高座に上がるのは 落語芸能協会・新会長の小しん(小日向文世)。

「え~。古着ってーのがありますけれども、あれがどーもわからない。
 なんでわざわざ他人が着たものを、金出して買わなきゃいけねーんで
 しょう。子汚いジーパンが何十万もするんですから、理解に苦しむって
 もんです。」


ショーウインドウに飾られた18万円のビンテージ・ジーンズを
うっとりとみつめる竜二(岡田准一)。
メグミ(伊東美咲)が隣の男性に間違えて目隠しし、
「やだ~!間違えちゃった。コツン!」
自分の頭にゲンコツを当てて舌を出す。

「わからないっていえば、露天で売ってるクレープね。
 歩きながらあんな甘ったるいの食ってるヤツの気がしれない。」


竜二とメグミは腕を組み歩きながらクレープを食べていた。
竜二の顔はクリームだらけ。
なぜか腰をかがめて竜二と腕を組むメグミに
「何でそんなに姿勢悪いの?」と竜二。
「だって・・・」
まわりのカップルはみな男性のほうが背がずっと高い。
「ちっちゃくて・・・すいやせん!」
「こっちこそ、でっかくて、すいやせん。コツン!」

「もっとわかんねーのは、あれ、マンガ喫茶。
 せっかく一緒にいるのに、マンガ読んで何が楽しいんでしょう。」


「グーグーガンモでっす~。」
竜二の物真似に
「ガンモより竜二君の方が面白いんだも~ん!」とメグミ。
「エヘヘヘヘ。」顔を近寄らせる竜二に。
「どうしたの?」とメグミ。

「お願い。一日でいいから私より長生きして。」
『めぞん一刻』の物真似に
「面白すぎて、集中出来なーい!」とメグミ。
「エヘヘへへ。」再びキスを迫る竜二に
「なんで!?」とメグミ。

「でも一番わかんないのは、昨今の落語ブームね。
 ちょっと顔がいいだけの若手が、キャーキャー言われて
 天狗になっていやがるんだから、世も末でございます。」


虎児(長瀬智也)を待ち受けるファンの女の子たち。
「なんだよ!何なんだよー!おめーら!」
「小虎さん、写真とってもいいですか?」
「あーいいよ。」
そこへ乱入するどん太(阿部サダヲ)。
ファンの子達は「おまえじゃねーよ!」と邪魔者扱い。

「ほんっとわからない。
 わからないわからないと言ってるお前が誰だかわからない?
 答えは15秒後。
 はい。タイガー&ドラゴン。」


その日、純喫茶よしこは『落語家芸能協会定例会議』で
貸切となっていた。
「遅い!15秒遅刻!」
遅刻したどん吉(春風亭昇太)を小しんが叱り付ける。
「私が危惧しているのは、若手育成に力を注ぐあまり、
 年功序列という秩序が無視され、それらが落語文化の衰退に
 拍車をかけるのではないか。」小しんが続ける。
「古典をしっかり継承できるベテランが落語会を引っ張り・・・」
小しんの話に茶々を入れる高田亭馬場彦(高田文夫)。
「林家亭はどのようにお考えですか?
 お宅の小虎は、まだ入門して一年未満。
 どうして兄弟子を抜いて二つ目に?」
「面白いんですよ。客もよく笑ってくれるし。」
林屋亭どん兵衛(西田敏行)がそう話す。
「みなさん、あれを面白いと思いますか?
 落語は文化です。伝統芸能です。一時的なブームに一喜一憂することなく
 正しい文化の継承に精進して下さい。」

虎児がドラゴンソーダに行くと、リサ(蒼井優)、チビT(桐谷健太)が
竜二がデス・キヨシ(ヒロシ)に再会した話で盛り上がっていた。
本屋で再会したキヨシは、『島耕作』を捜し求めていたと聞き、みんな
大笑い。
芸能協会会長・小しんに有害落語と言われ、虎児は竜二に相談する。

そば辰。
どん兵衛、高田亭馬場彦、淡島が、小しんについて話していた。
保守派の小しんは、最近人情噺しかやらず、客が泣く前に自分が
泣いてしまうらしい。
対抗策として、淡島は、小虎と自分とあと一人で、ビジュアル系落語を
結成し、若い客を集めようと提案する。
「ユニット名は、淡島の淡と、虎と、竜をかけて、
 『毎度お騒がせボーイズ』!」
だがどん兵衛は、竜というのが竜二と知り、
「あの男は波紋した。」と首を横に振る。

ドラゴン・ソーダ。
本当にあった面白い話しか話せないという虎児。
「落語って基本、作り話だから。
 ついでに言うと、さっきのデス・きよしの話も作り話。」と竜二は言う。
「虚言癖かよ。」と虎児。
「笑わしたもん勝ちっすよ。たとえばね~、首提灯っていう落語知ってる?
 酔っ払いが女郎買いに行く途中、侍に首を切られんの。
 でもあまりにも剣さばきが見事だったから、切られた本人が切られたことに
 気づかない。
 で、しゃべっているうちに、首がこう、ずれてきたりして。
 で、最後には首を提灯みたいに上げて、
 『ごめんよー、ごめんよー、』ってみんながこう、」
「お前、あり得ねーよ!そんなこと。首切られたら歩けねーじゃねーかよ!」
「あり得ねー話で客を引き付けんのが面白いんじゃん!
 疝気の虫なんて、虫が主人公なんだよ。
 悋気の火の玉だって、死神だってねずみだって、」
「ちょっちょっちょっちょ!
 お前それ全部出来んのかよ。」
「出来る。」
「すげ~。俺に全部教えてくれ!」
虎児は竜二にそう迫るが、竜二はメグミとのデートで毎日忙しく
それどころではないらしい。
「毎日デートしているのに、まだチューしかしてないんです。」
とリサ。

その隙に、メグミは虎児を店の外に呼び出して相談をする。
「嫌いなわけじゃないよ。むしろ好き。一緒にいると面白いし。
 ていうか、面白すぎて疲れるの。」
どうやら、「面白い人好きになるの初めて!」というメグミの言葉が
竜二に火をつけてしまったようだ。
「ずっとリアクション求められてる気がして。」
あまり笑わないと、「面白くなかった?」と聞き次のネタを出してくる。
笑ったら笑ったで、必ずキスを迫るらしい。
「面白いのが好きって、そういうことじゃないでしょう?
 そんなに笑いがとりたいのなら、芸人さんにでもなっちゃえばいいのに。」
虎児はメグミのその言葉に驚く。自分も同じことを考えていたのだ。
「そんなに笑いとか落語にうるせーならよ、客前でやっちゃえばいーんだよ。
 もともと噺家なんだし。こんな店ほっとけば潰れるんだし。」
途中から聞いていた竜二はメグミの手をとり行ってしまう。
「竜二!」虎児が呼びかけると
「やんねーよ。落語なんて、3回生まれ変わってもやんねーからな!
 ガルルルル!」

笑いの魅力、落語の面白さを語る竜二。
自分でも気づいていないようですが、生き生きと、本当に楽しそうに
語っていました。


谷中家の夕食。
深刻な表情で考え込む虎児が、師匠に話し出す。
「今日竜二に会ったんだよ。あいつからいろいろ落語の話聞いてさ。
 虫の話とか、ねずみの話とか、あと首の話とかよ。
 で、思ったんだけど、あいつやっぱり、落語やったほうが
 いいんじゃねーかって。」
「やれやれ。今日はとんだ小竜デーだな。」師匠が苦笑する。
「落語の話してるとき、あいつすげ~楽しそうだし、
 そういうとこ師匠譲りっていうか。やっぱ親子なんだよな。
 何より俺が見てーしよ、あいつの高座。」
師匠は弟子たちにどう思うのか聞いてみる。
「性格はともかく、腕は若手で一番だと思います。」
弟子の言葉を本当に嬉しそうに聞く母・小百合(銀粉蝶)。
「上手いのよ。もうね、うっとりしちゃう。
 あの子の品川心中なんてね、しん朝を越えたとか超えないとか、
 いろんな人がいろんなことを言ってね。」と小百合。
「それはちょっと買いかぶりすぎだよ。
 そりゃ小竜も10代の頃は天才だのって言われたけれど、
 今はもう24だものな。
 それにブランクだってあるわけだし、
 やってみて、今一つぱっとしなかったらさ、傷つくのは本人だからさ。
 それになんてったって、第一に、あいつにその意思がなきゃさ。」と師匠。
「あるよ。あいつは落語やりたがってるよ。
 まだ自分がそれに気づいていないだけなんだよ。」と虎児。
「どん太、おまえさんはどう思うんだい?」
「まぁ、物理的に部屋数が足りないっていうのは・・・ね。」
「そしたら、私たちがアパートを借りればいいじゃない。」と鶴子(猫背椿)。
「え~。夢の2世帯同居は?」
「いいじゃん別に。近所なんだから。」
「やだ~。」
どん太と鶴子が揉めるのを見て
「俺が出て行く!!」と虎児。
「もともと他人なんだよ。出てくのは構わない。
 だから師匠、あいつ呼び戻してやってくんねーかな。」
「もともと他人だ~?何言ってんだよ。そんな寂しいこと言ってんじゃないよ。
 どこの誰が他人に、しかも俺にとっちゃおっかない借金取りに
 こんな美味ししご飯たべさせるよ。え?
 お前さんはね、うちの敷居を跨いだ時から、家族の一員なんだよ。
 寂しいこと言ってんじゃないよ。」
「師匠・・・」
「そんなこと言ってると、小百合ちゃん泣いちゃうぞ。」
半べその小百合。
「まだないてないけど・・・もうじき泣くだろ?
 泣いちゃ、ほら泣いちゃったじゃねーか。
 いいか。小百合ちゃん泣かせたのは小虎、お前だからね。
 謝んな。謝んな。」
「お母さん・・・すんません。本当にすんません。」
「わかった。」小百合が返事する。
「じゃ、小竜の話はこれでおしまい。
 小百合ちゃんもいつまでも泣かない。」
「はい。」
「今はご飯たべるときなんだからね。」
どん太が明るく「いただきます!」と挨拶をし、再び賑やかな食卓に。
小百合は虎児に好物のさつまいものコロッケを取り分けた。

師匠が波紋した竜二を家に戻さないのには、意地になっているのかと
思っていたら、親心からだったんですね。
師匠としても、親としても、立派な人です。
そして、虎児への言葉もすごくよかった。
親を小さいときに亡くした虎児。
家族というものがよくわからない彼にとって、谷中家の温かさは
幸せそのものなんでしょう。


竜二が間借りするアパート。
グミに68万円もするビンテージ・ジーンズの切抜きを見せながら、
「このビンテージに自分のデザインを加えたい。
 たとえば、この両脚にビシっとウラハラドラゴン、プリントしてさ、
 それでも勝ちは下がんない。むしろ上がる?
 100万や200万で売れちゃうような、そんな男になりたいと思って
 がんばってる。
 それが達成出来たら、服屋やめてもいいっつーか。
 それまではやめらんなにっていうか。
 今のは誰にも言わないでね。これは俺とメグミちゃんだけの秘密。
 つーか、言わねーか、こんなつまんない話。」
「つまんなくないよ。
 面白いっていうか、嬉しい。そういう話が聞きたかったの。
 竜二君が面白いのはみんな知ってるでしょう?
 でも竜二君のまじめなところとか、熱いところとか、夢とか、
 そういうのは彼女しか知らないでしょ?」
「彼女?」
「メグミ、竜ちゃんの彼女!」
二人の顔がそっと近づき、そしてキス。
「先、行っていいっすか?」
竜二の言葉にうなずくメグミ。
「きたーーーーっ!!」
竜二、張り切って部屋を掃除。
そしていよいよ、という時、チビTとリュウさん帰宅。

どん兵衛の高座。
「え~、いっぱいのお運び、有難く御礼申し上げます。
 この東京を江戸と申しました時分、道具屋という商売がございまして。」


「おっ。道具屋だね。」と辰夫。
「違うわよ。猫の皿。」着物姿の小百合が席に座り笑う。

「掘り出し物の道具をめっけて、安ーく買い叩いて、よそ様で高く売る、
 こういう商売なんですなぁ。」

「えーっ。お宅じゃあれですか、いくら戦がなくなった世とはいえ、
 太平の御世とはいえ、兜を逆さにして花瓶にして使っていらっしゃる。
 これじゃー、生けたお花が可愛そうだな~。
 たまたま私、高価な花瓶を持っているんですが、その花瓶とその汚い兜を
 交換しましょう。」

「高価な兜と安物の花瓶を交換しちまうんですな。
 ところがこの花瓶、あとで調べてみると、明珍の作だったりしてね。
 なんと、みょうちくりんな話だな。」


会場、大爆笑!
「しょうがないねー。」虎児、半蔵、辰夫、小百合が声をそろえて言う。

峠の茶屋に入りますと、猫がいる。
「じいさんじいさん、お前さんとこ、猫飼ってるのかい?
 3匹もいるじゃないか。」
「え、そうなんでございます。
 オスが2匹、メスが1匹でございまして。」
「可愛い顔しtげるな。こっちへおいで。」
「ニャーオニャーオ。」

話に引き込まれていく虎児。ふと隣の席を見ると、
「ぶっほ!」小百合ちゃんたちが猫に!

「そのネコ、あまり構わねーほうがいいですよ。
 油断していると引っかかれますからね。」と店主@虎児。
「構わねー構わねー。俺、ネコ好きなんだよ。」と客@どん兵衛が
ネコを抱く。
「お客さんのお召し物に怪我つくじゃねーか。降りろ。」
店主がネコを下ろす。
客人は、別のネコ@どん太がエサを食べている器に気づく。
「はっ!これは。高麗の梅鉢じゃねーか!てーしたもんだ。
 300両だったら羽が生えて売れるって~くらい、掘り出しもんだ。
 その皿でネコにメシ食わしてるとこ見ると、ここのじーさん知らねーな。
 よーし!」
「へへへへへ。このネコずいぶんとまた可愛い顔してるじゃねーか。
 可愛い可愛い!すっかり俺に懐いちゃってるよー。」
「猫好きな方がわかるんでしょう。ネコの方もね。」
「俺はネコ好きだ~。やっぱりネコが好きだ~。
 じいさん、物は相談なんだけどよ、このネコ俺にくんねーかな。
 いや、タダとは言わねーよ。小判3枚で3両。
 これまでの鰹節代だ。ここに置いておくよ。」
「こんな汚ねーネコに3両?」
「うちには子供がいねーんだよ。それでネコの一匹でも飼えば
 気がまぎれるんじゃないかと飼ってみたんだがな、ついこの間
 逃げられちまってな。以来かかぁもずっと塞ぎ込んでいるんだよ。
 だからな、こいつ連れて帰れば、かかぁも喜んでくれるんじゃねーかと
 思って。」
「そういうことでしたらね、じゃ、遠慮なく。」店主が3両を懐にしまう。
「ちゃんと可愛がるからよ。
 ところでじーさん、ネコのエサってのは、この~この~、この皿で
 やってたのかい?」
「ええそうなんです。」
「じゃ、ネコってのはよ、皿が変わるとエサ食わなくなるってーから、
 こいつもついでにもらってくわ。」
「茶碗でしたら、こちらのを。」
「そうはいかないんだよ。おめーさんだって、この皿で食いたいだろ?」
ネコに問うがネコは首を傾げるばかり。
「この茶碗でも喜んで食べてくれますからね。」
店主は客が手にしていた茶碗を受け取り、別の安物の茶碗を手渡す。
「いいじゃねーかよ。そんな汚ねー皿の一枚や二枚。
 こちとら3両払ってんだよ。」
「汚い皿とおっしゃいますが、お客さん。この皿は高麗の梅鉢と、
 値打ちのある皿なんでございます。」
「えー!?そんなこと知らなかった!知らなかった!そうかい!
 そんな値打ちのある皿で、何だってまた、ネコにエサを
 食わしてるんだよ!」
「それが面白いでございます。
 この皿でネコにエサをやるますってーと、ネコが時々3両で
 売れるんでございます。」


会場、大拍手!
「日本一!」「どんちゃん!」辰夫と半蔵が声をかける。
「すげーよ!やっぱ、スゲーよ!」と虎児。

おでんの屋台。
「どんちゃんの落語で、猫の皿が一番好き。
 短いけど、ちゃんと人間が描かれているのよね。」
小百合が虎児に言う。

その頃、そば辰。
淡島はどん兵衛に、落語に限らず、芸人志望の若者を集め、
人気の出そうな奴をスカウトしようと言い出す。
名づけて、『素人お笑いスカウトキャラバン』。
その際、落語オタクばかりが集まらぬよう、芸能協会の名前は
一切出さず。
柳亭に審査員長を頼んでみたら、肩書き好きの彼は渋々ながら
引き受けてくれたそうだ。
淡島はどん兵衛にも審査員長を頼み込む。

おでん屋。
小百合が虎児に言う。
「猫の皿っていえばね、ちょっと苦い思い出があるのよ。
 小竜もそろそろ真打って話が上った時に、独演会をやることに
 なってね。小しん師匠に教わりにいったの。
 父ちゃんあの子に『子別れ』をやらせたかったの。
 知らない?『子はかすがい』って。」
「『子別れ』は、小しんの十八番だからな~。」と半蔵。
「小しんさんは、保守派で、どんちゃんのライバルって言われてて。
 息子の小竜が20歳そこそこで30人抜きで真打になるってのが
 気に入らなくてさ。」

過去。
小しん師匠の元で稽古をつける小竜。
「え~。その昔、道具屋という、」小しんが稽古をつけ始める。
「ちょと待って下さい、師匠。
 自分、『子別れ』を教わりに来てるんですけど。」
「わかってますよ。
 道具屋というのは・・・、」

「来る日も来る日も、『猫の皿』で、ちっとも『子別れ』を
 教えてくれなかったんだって。」
「なんだそれ!ただのいじめじゃねーか!」と虎児。
「高座で恥かかそうと思ったんでしょう。
 あの子は鼻っぱしが強いし、なかなかどんちゃんに言い出せなくてさ、」

過去。
「あの、師匠。」竜二がどん兵衛に声をかける。
「どうだい?『子別れ』は難しいかい?」
「はい。でもやりがいがあります。」
「柳亭はあれで、芸術大賞を取った。
 お前さんももうすぐ真打。
 流派とか派閥にとらわれず、今のうちに本物の芸をよく見て、
 しっかりと吸収することだ。」
「はい、ありがとうございます。」

おでん屋。
「本当、素直じゃないんだから。」
「つーか、敬語でしゃべってたのかよ!」
竜二の噺家としての様子に驚く虎児。
「どんちゃんと小しんさん、二人とも協会の会長に推薦されてた時期だし、
 何か揉め事があっちゃいけないって、あの子なりに気を使ったのよ。
 それが裏目に出ちゃったのよね。」

小しんに『猫の皿』を習い続けた小竜。
「小竜、独演会はいつだい?」
「明日ですが・・・」
「そうか・・・」
そして小しんは、『子別れ』を演じ始める。

「いくらあの子が天才だって、前日に急に教わったって、できる様な
 話じゃないのよ。
 それでもあの子、必死に覚えて、高座に上がったんだけど・・・。」

高座に上がった竜二。
だが、言葉が出てこない。無言のまま、時間だけが流れていく。
舞台の袖から心配そうに見守るどん兵衛と小百合。
「がんばれ、がんばれよ。」と応援するが・・・。

「思えばあれが、最後の高座になったのよね。」と小百合。

「あんなもの高座にかけられたんじゃ、教えた私はもちろん、
 林家の看板にも傷がつきますよ。
 大体、大事な息子の独演会の演目を、よその噺家に習わせようっていう
 了見が気に入らない。
 そりゃ、反対派の私が教えりゃ、せがれを真打として認めたことに
 なる。冗談じゃない!魂胆が見え見えなんですよ。
 まったく、親が親なら子も、」
小しんが関係者に訴えているのを竜二は聞いてしまい、そばにあった
灰皿を小しんが座る椅子目掛けて投げつける!

「てめーのクソつまんねー落語なんて誰が覚えるかってんだ!
 うちの師匠はな、人情話が出来ねーんじゃねーんだよ!
 やんねーんだよ!
 なんでかわかるか!?
 あんたみてーにふんぞり返ってる野郎がいるからだ!
 バカヤロウ!
 てめーの『猫の皿』なんかちっとも笑えねーじゃねーか!」
小しんの首根っこ掴み、泣き叫ぶ竜二。
「やめろ竜二!謝れ、師匠に!」
どん兵衛が息子の名を呼ぶ。
竜二は父の声に、掴んでいた手を放し、一人通路の奥へと歩き出す。
息子の後姿を見送りながら
「小しん師匠、申し訳ありません。本当に申し訳ありません。」
どん兵衛はその場にひざを着き頭を下げる。
小百合も夫の後ろから、頭を深く深く下げていた。

「あの事件のせいで、どんちゃん、会長のお話を辞退したの。
 でもね、今となってはよかったと思う。
 だって、偉くなってからの小しんの落語、ほんっとつまんないもん!
 落語はね、芸術じゃないの。庶民の娯楽なのよ!」
そこへどん兵衛が、ほろ酔い加減でやってきた。
「帰ろ。」と小百合を屋台から連れ出す。
「いい年して焼いてるよ。」と半蔵。
「そんなんじゃねーよ!」虎児が慌てて師匠に言う。
「そんなんじゃなかったら、何なんじゃ!猫泥棒!ガルルルル!」
二人は仲良く家へと帰っていった。

「ガルルルル」って吼えるところまで、どん兵衛と竜二は似ています。
お互いを思いやる、素敵な親子だったんですね。
今はお互い素直になれていないけれど、本当に素敵な親子。


虎児が組長の家に呼びだされた。
『素人お笑いスカウトキャラバン』に銀次郎が出たいと言い出したらしい。
それだけではなく、落研出身の組長に話を書くよう頼んだらしい。
嘆く組長に、
「じゃ、俺が変わりに書きます!」と虎児は言うが、
「お前の話は面白くない。大事な息子の滑るとこは見たくない。」
と組長に却下され、
「師匠!・・・間違えた、おやっさん!
 俺は昔の俺じゃありませんよ!」と訴えるが
「師匠言った時点で説得力ない。」と組長。
銀次郎は結局自分で考えると部屋へ行ってしまう。

組長も人の子。自分の息子が滑るところは見たくない。
親心ですよね。


純喫茶よしこ。
虎児は小しんに、銀次郎とコンビで漫才をやると出演交渉。だが
「お前さん、素人じゃねーだろう。」と小しん。
「落語じゃ食えてねーからプロでもねーよ。」と虎児。
「そんなことでいばってどうすんだい!
 林家亭に弟子入りしたんだから、プロだよ。芸は素人だけどね。」
小しんの言葉に怒った虎二、本を投げつける。
それがコーヒーに当たり、小しんのズボンにこぼれる。
「じゃー出ねーよっ!!」
虎児は怒って店を出ていく。

虎児を追ってきた銀次郎が、ショーウインドーを見つめるメグミに
気づく。
『高級ジーンズ5000円』を見つめ、メグミは慌てて竜二にメールを
打ち始める。
「竜ちゃんがほしがってたの。でも高くて買えないって。」
「いくらだって?」と銀次郎。
「68万円!」
「ぶっほ!」虎児もその金額にびっくり!
「日本に少ししかないの。手に入ったら服屋辞めてもいいって。」
メグミがメールを送信すると、虎児の携帯が鳴る。竜二からだ。
「金貸して下さい!事情はあとで話すんで。」
「おう。いくらだよ。」
「5千円!」
「5千円も持ってねーのかよ。」
タクシーに乗りこむ竜二。
だが3人が目を離した隙にジーンズは売れてしまった。
ズボンにお茶か何かをこぼしたといい、買っていったらしい。
虎児が走る!
寄席の楽屋で本を読む小しん。
彼がはいているのはまさしく、そのビンテージ・ジーンズだった。

小虎が高座にあがる。
「江戸と申しました時分、道具屋というのがありまして、」
「道具屋だね。」と辰夫。
「ふっ。」と笑うよしこ。
「猫の皿だよ。」と半蔵。
「まだわかんねーだろ!」辰夫が半蔵に掴みかかる。
「・・・続けてよろしいでしょうか?」高座の虎児が言う。

「掘り出し物に当たれば大変な儲けになるなんていいますが、
 これは人間にだってあることでして、類まれなる才能の持ち主が
 世の中に埋もれている場合もございます。
 私もそのうちの一人でございまして、はい。
 タイガータイガー、じれっタイガー!」


会場から拍手。
「自分で言ってりゃ世話ないわな。」と辰夫。
「えーっ。反物屋の竜の話でございます。
 血眼になって探していた反物、黙っていたら68万円の代物でございます。
 これがなんとまぁ、たったの5000円で売りに出されてまして、
 この反物を買ったのが、あのへそ曲がりで有名な芸人、柳川小しん師匠。
 頭下げたって、素直に売ってくれるような相手じゃない。」


虎児は小しんのジーンズを褒め、小しんにジーンズを持たせて
写真を撮らせてもらう。

コンテストの優勝景品は大島紬の着物。
2位は、落語名作全集のDVD。
4位以下は、扇子と手ぬぐいと湯のみセット。
虎児は小しんのビンテージ・ジーンズを3位の景品にしてしまう。

「というわけで、気難しい小しんをうまく言いくるめまして、
 竜がほしがっていた反物を、まんまと景品にしたわけです。」


高級ジーンズをエサに、竜二に出場を進める虎児。
「そう簡単に決められないって。
 今は素人だけど、一応は噺家の息子だしさ。」と竜二。
「要するに、負けるのが怖いんだろ!」と虎児がけしかける。
「そんなんじゃねーけど、」

「心がぐらっと揺れたところで、強烈な援護射撃が入ります。」

テレビに映る『おもろいトリオ』を見たメグミが言う。
「この人たちって面白いよね。メグミ、ちょー好き!」
「そうかなぁ。よくあるパターンだと思うけど。」と竜二。
「でも面白いじゃーん!」
「・・・俺と、どっちが面白い?」
「やだ~。竜ちゃんに決まってるじゃーん。
 でもふかわりょうは、竜ちゃんより面白いと思う!ちょー好き!」
怒りで震える竜二。
そして、どん太に一発芸を習いにいく。

「こうして兄による地獄の特訓が始まります。」

「ドラゴンドラゴン 清少なご~ん!」
特訓を続ける二人。。
「うらはらうらはら エジンバラ!」

「そしていよいよ、運命の日がやってきます。」

「やっぱ来るんじゃなかった~。」と竜二。
「いいか、うらはら、清少納言から入って、エジンバラやって、
 あるあるネタ、自虐ネタ、で、ダメだったらモノマネで逃げちゃえ。
 そうすれば有償間違いなし!」とどん太が最終打ち合わせ。
「優勝じゃだめ!3位じゃないと。」と虎児。
「ここさ、独演会やった場所なんだ。」
竜二は自分が投げつけた灰皿を見つめる。
「大丈夫だよ。おめーはあん時と違うんだからよ。」と虎児。
「何で知ってんの?」
「やべー!」

「よう、竜二。」
夜なべして作ったというヘビと辰パペットを手に辰夫が声をかける。
銀次郎はアニマル鍋つかみで試みたが撃沈。

「本当に、誰も見に来てねーだろうな?」
「当たり前じゃん!誰にも言ってねーもん。」と虎児。
「安心しろ。師匠も母さんも、家でアタック20見てるから。」とどん太。

竜二の番が呼ばれる。
舞台の袖でギリギリまでどん太と練習する竜二。
「次の方、どうぞ。」
司会の淡島に呼ばれ、竜二が勢いよく舞台に飛び出す。
「はいどうも~!ドラゴンドラゴン、」
審査員を見て、竜二の動きが止まる。

「なんとまぁ、江戸の中でもえりすぐりの玄人、芸にうるさい師匠連中が、
 雁首並べております。
 そしてその中には・・・」


「竜二・・・」審査員席からどん兵衛が息子を見つめる。

「この状況で緊張するなって方が無理な話で・・・」

「どうしました?」審査員席から小しんが声をかける。

舞台の袖を見る竜二。虎児たちが見守っている。
竜二はマイクスタンドを横にどかし、静かにその場に正座する。
「え~。道具屋というのは、掘り出し物が当たればこれはもう大変な
 儲けになるようですが、この掘り出し物というのはそうざらには
 ないようです。」

「驚いたことに、反物屋の竜、急遽演目を変えたんです。
 その語り口たるや、私なんざ足元にも及ばない。
 まさに立て板に水、いやいや、使い慣れたミシンのように
 ここちいいリズムで進んでいきます。」


「猫ってやつは、食いなれた皿じゃないとメシを食わないって
 いうからね。じゃ、その皿もらっていくよ。」
「これはあの。そこにお椀がありますから。」
「いいじゃねーか。そんな汚ねー皿。」
「そうおっしゃいますが、これは高麗の梅鉢の皿といって、
 まぁお客さまはご存知ないかもしれませんが、そりゃもう、
 黙ってたって、200両や300両の値打ちのある皿なんです。」
「・・・そうかい。それじゃあなんでそんな高価な皿で猫にメシを
 やるんだい?」
「それが面白いんでございます。この皿で猫にメシをやりますと、
 時々猫が3両で売れるんです。」

噺が終わり、静かに頭を下げる竜二。
しんと静まり返った会場に、静かに顔を上げる。
すると、師匠が、涙ながらに札を上げていた。
審査員たちからも拍手が沸き起こる。
小しんも笑顔で拍手を送っていた。
「竜ちゃん!ちょー好きー!」舞台の袖からメグミが声をかける。

「なんと反物屋の竜は、父親である小吉にスカウトされてしまったんです。
 それだけじゃない。」


「優勝は・・・青山にお住まいの、谷中竜二さんです!」
審査員長の小しんに大島紬を渡される竜二。
「いらねーよ。」
「今度時間ある時、うちへいらっしゃい。
 『子別れ』、教えてやるよ。」
小しんの言葉に、竜二は笑顔を見せた。
ちなみに、3位の景品を受け取ったのは辰夫!!
早速身に着けたジーンズを奪おうと、竜二は辰夫に飛び掛る。

純喫茶よしこ。
「ペペロンチーノ、おまたせ~!」
「いやー、一本取られたってのはこのことだよ。
 お前もな、じっくり考えて結論出しなよ。
 あれだけしゃべれれば、うちの方では問題ないから。」
「別にやりたくてやったわけじゃないしさ。」
息子の言葉に笑う父。
「今月分の授業料です。」虎児が胸ポケットから20万円を取り出す。
受け取ったお金を封筒に入れる父。
その様子を横目でみる竜二。
「で、今月分、息子に渡してもいいかな?」
「いいわけねーだろ、こら!」
「な、あんた知ってたんだろ?俺があのジーパンほしがってたこと。」
「そんなの知らねーよ。」どん兵衛が答える。
「じゃ~なんであれが景品になってんだよ?」
「エヘヘヘヘ。それが面白いんですよ。
 あれを景品に出しますとね、」

「時々面白い素人が、タダで釣れるんです。」

会場から拍手が沸き起こる。
「林家亭!」
「虎ちゃんも、ちょー好き!」とメグミ。
「やめろよ、バカ。」虎児がうれしそうに笑う。
「俺も、ちょー好き!」と辰夫。
「テメーは黙ってろこらぁ!」
「わたしゃ認めないよ。」と言いながら、小しんも小さく手をたたいた。

寄席の入り口で様子を伺う竜二。
中に入るよう店のものに言われるが、そこから逃げ出す。
そこへメグミが出てくる。
「遅かったね、もう終わっちゃったよ。」
「いいよ。どうせへったくそな猫の皿だろ?」
「でも面白かったよ~!」
「俺と、どっちが面白い?」
「オムライス、食べに行こ!」
「どっちだよ~!!」


親子っていいな~と思わせてくれる第7話でした。
竜二がお笑い芸人から落語家になる瞬間がとても気に入りました。
落ち着いた物言い、穏やかな微笑み、品格。
もっと見たかったです。
『子別れ』か『品川心中』をいつか見せてくれるのかな?
竜二を見守るどん兵衛の表情もとてもよかった!

今回のゲストは『瑠璃の島』にも出演中の小日向さん!
こんな意地悪な役も、さすがでした!

※夫のノート借りて更新しています。(笑)
使い慣れていないので、PCが返ってきたら見直しします