대본

タイガー&ドラゴン 第8話

塚本高史 2007. 11. 20. 23:50

タイガー&ドラゴン 第8話

『出来心』

高座に上がる、ジャンプ亭ジャンプこと淡島(荒川良々)。
「どうも。ジャンプ亭ジャンプです。
 好きなスーツはジャンプスーツ!」

会場、し~ん。
「え~。出来心という言葉がありますが、心が出来てないヤツに限って
 よからぬ事を考えるもんです。
 心の隙間に魔物が入り込む、魔が刺したってヤツですね。」


新宿流星会・事務所。
テレビでは『おもしろトリオ』が漫才をしている。
「頑張らなあかんな言うてるんですけど、」
組長(笑福亭鶴瓶)が一人息子の銀次郎(塚本高史)に
彼らは頑張ってないから「頑張らなあかん」と言っている、
頑張っている人はいちいち「頑張らなあかん」とは言わない、
と言い、テレビを消してしまう。
「銀次郎、お前頑張っとるか?」
「えっと・・・頑張って・・・ません。」
父親の激怒が息子に飛ぶ。

「最近は、仕事もしない、学校も行かない若者を、
 ニート、なんていいますね。
 心の、病だそうです。」


車の中。
「俺、ニートなのかもしんない。
 正直何もやる気しないんですよ、最近。
 就職活動しているヤツラを見ると、
 このままヤクザになるのも何だか違うっつーか。
 でも特にやりたいこともねーし。
 何もしないのもアリかなって。」銀次郎が言う。
「またまた!卒業したら心入れ替えて、ヤクザ業に専念して、
 流星会の歴史に名前残してもらわないと。」と日向(宅間孝行)。
「ヤクザで名前残すのもどーなんだっつーか。
 俺ゴルフとか興味ねーし、結局家でダラダラするの目に見えてるし、
 バイトするのもチゲーっつーかめんどくせーっつーか、・・・」
車を運転していた虎児(長瀬智也)は、そんな銀次郎に
「甘ったれてるんじぇねーぞ、コラ!
 やりたいことがない?
 そんなものは怠け者の言い訳なんだよ!
 ヤクザならヤクザらしくビシっと決めろよ!
 ニートなんか俺が治してやる!」と虎児はすごい剣幕で怒り出す。
「ニートは殴っても治んねーぞ。」と日向。
「ってか、ニートって何ですか?」

「ま、このヤロウには何年かけて説明しても、理解出来ないでしょうが。
 今日のお話は、そんな、悩める若者のお話。
 それでは参りましょう。
 タイガー&ドラゴン。」


ドラゴン・ソーダ。
虎児は竜二(岡田准一)にもう一度落語やるのか?と聞くと、
こちらもやりたいかどうかわからないという。
「仮に、俺が親父の弟子になるとしたら、俺、前座?」

谷中家。
「冗談じゃないよ。前座からなんてやらせられるか。
 うちは、身内だからって特別扱いはしないからな。」
林屋亭どん兵衛こと谷中正吉(西田敏行)がそう言う。
「ってことは、俺よりも・・・」虎児の呟きにみんなが声を揃えて
「ずーっと下!」という。

ドラゴン・ソーダ。
「だってよ。」と師匠の言葉を伝える竜二。
「あり得ねー!」
「だったら抜けばいいじゃん。」
「抜くよ。抜くけどよ、兄弟子は兄弟子だ。
 一生兄さんって呼ばなけりゃならない。」
「つーかよ、お前いつも俺のことクソつまんねーって言ってるけど、
 俺の高座を見たことがないだろう!?」
虎児の高座を見たというリサにどうだったか感想を聞く竜二。
「笑っちゃったけど正直あまり好きじゃないかも。
 古臭いっつーか泥臭いっつーか。
 あと顔が怖いのがね。子供とか泣いちゃうかも。」とリサ。
「そこまで言われちゃ是非とも見に来てもらわないとな!
 今月中に見に来なかったらこの店ぶっ潰すぞ!」
虎児は竜二、リサ、チビTに寄席のチケットを渡す。

銀次郎がパチンコ屋から出て車に戻ると、警官が駐車違反の
取締りをしていた。
銀次郎は慌てて警官に「今止めたばかり」と抗議する。
「2時間ずっと止まってた。」と警官。
二人は顔を見合す。
その警官は、銀次郎の幼馴染・金子準(高岡蒼佑)だった。

交番に戻った金子は私服に着替え、二人は食事に行くことに。
銀次郎はその私服を見てびっくり。なんと竜二の店のものだった。

借金の取り立てばかりの日々で、刺激に飢えていた銀次郎と、
交番勤務に飽き飽きしていた金子は、意気投合。

「もっとドラマみたいな、柴田恭平みたいのを想像していたんだけど、
 現実は厳しいっつーか。
 先輩が汚職に走るの、すげーわかる。
 なーなー、お前んとこ、薬とか拳銃とかやるの?
 警察に話通しておいたら、バレないで捌けるんだってよ。
 お前んとこ、そーいうの、ないの?」
と金子。
「なしなし。親父が嫌ってるんだよ。一切なし。」
「マジで?ダメじゃん!」
虎児にヤクザならヤクザらしくびしっと、と言われた言葉を思い出す
銀次郎。
「そういう情報とかって入ってくるの?」と聞いてみる。
借金の取立てばかりの銀次郎は、そういうVシネチックな話に飢えている、
と金子に話す。
すると、『新宿の神保組』を知っているか、金子に聞かれる。

車の中。
「平均年齢30そこそこの、何でもアリアリの、血の気の多いピラニア軍団」
銀次郎に神保組のことを聞かれ、虎児はそう答える。
「構成員どんどん増えて、30人超えたんですって。」と銀次郎。
「それがどうした?つーかあれなんだ?」
「すいません、今日罰金払いに行きますんで。」
「おぅ。ところでお前あれどうした?ニット。」
「・・・ニートっすか?」
「知ってるよ、わざとだよ。治ったのか?」
「治ったっつーか・・・まぁやりたいことは見つかりそうです。」
虎児を寄席の前で降ろしたあと、銀次郎はしばらくその場で考え込む。

高座にあがるどん兵衛。
「え~。相変わらずのお笑いで、ご機嫌伺います。
 近頃の泥棒っていうのはあれですね、
 手口が巧妙になってきましたですなぁ。」

「おっ!出来心だね。」会場の辰夫。
「ピッキングとかいいましてね、
 2重にも3重にもなっている鍵を、パパーンと開けちゃうんですねー。
 立派なもんですが、立派なもんと言う言い方も何ですがね。
 
 私どもの噺に出てくる泥棒ってーのは、後世に名を残すような
 泥棒ってーのはまず出てこないですね。
 まぁ、後世に名を残す泥棒ってーのも、まぁ、どうかなーとは
 思うんですがね。」

「おぉ、何か聞いたことあるなー。」と虎児。

「どうだい?ちゃんとやってるかい?こっちの方は?」
「はい。心を入れ替えて、せいぜい悪事に励んでおります。」
「そうかい。それでこそ俺の倅だ。
 じゃーおめぇ、空き巣でもやってみるか?」
「空き巣といいますと?」
「留守に忍び込んで、何がしかいただいてくるんだよ。」
「そいつは、タチが良くないと思うんですけど。」


「バカ!タチのいい泥棒がいるかよ!
 亭主の方は稼ぎに出てる。
 かみさんの方は夕飯の買い物に出かけてる。
 そこを付け込んで入るんだよ。
 まず外から、ごめん下さい、と声をかけてね。」
泥棒の父親(笑福亭鶴瓶)が言う。
「出かけてなかったらどうするんです?」
「そういう時は、しらばっくれて何か他の事を聞けばいいんだよ。」
「あー!近頃の江戸幕府をどう思いますか?なんかですか?」
「そんな難しいことを聞いてどうすんだ。
 そういう時は、この辺に、ナニ屋ナニ兵衛さんはいらっしゃいますか?
 って言うんだ。
 相手が知ってても知らなくても礼を言って違う家をあたるんだ。」
「途中で帰ってきたらどうします?」
「盗みに入って見られたら逃げたってしょうがねーじゃねーか。
 そういう時は、泣き落とし、という手を使うんだ。
 盗んだ物をみんなそこへ出して、泣きながらこう言うんだ。」

「実は、職人のことで。
 親一人子一人、そのたった一人のお袋が、
 3年越しに患っておりまして、仕事も手につきません。
 家にいれば、病人に飲ませる薬もございません。
 困り果てたところに、お宅様の前を通りかかりますと、
 戸口が開いておりましたので・・・
 ほんの出来心です。」
「・・・とまぁこうやって涙をこぼしていやぁま、出来心じゃしょうがねぇ。
 これお袋さんの薬代だーってんで、いくらかおあしも、くれようって
 寸法なんだよ。」


「つまりあれだ。
 ごめん下さいと声をかけて、返事があればナニ屋ナニ兵衛、
 なければ留守だから勝負する。
 途中で帰ってきたら、出来心。
 なんだ、簡単じゃねーか。

ふんどしパブのドアに手をかける銀次郎。

「ごめん下さい。」泥棒(塚本高史)が一軒家の入り口で声をかける。
「なんでぃ!?」出てきたのは上半身裸の男。(阿部サダヲ)。
部屋の中には裸の男たち。いかにも怪しい雰囲気だ。
「あの、いつごろ留守になります?」
「そうさな。今盛り上がってっから、明け方まで呑むんじゃねーか!?」
「後ほど伺います。」そう言い泥棒は逃げ出すが、捕まってしまう。
「あの、この辺に、ナニ屋ナニ兵衛さんはいらっしゃいますか?」
「なんだと!?」
泥棒は部屋に連れ込まれ、服を脱がされそうになる。
「思い出した!
 さいご兵衛さん、さいご兵衛さん、ご存知ありませんか?」
「さいご兵衛?」
「いる訳ないですよね、そんなイタチみたいな名前の人。」
「いるよ。おい!さいご兵衛。」
さいご兵衛(長瀬智也)、登場。
「あなたが、さいご兵衛さん?」
「ああ。おれはさいご兵衛だべ。なんか用か!?」
「あの・・・宜しく言ってました。」
「誰が?」
「私が。」
「やっちまいな!」
男たちに押し倒される倅。
「出来心!出来心!」と絶叫する。

上半身裸にされた銀次郎。
ふんどしパブから「すみませんでした」と叫びながら逃げ出す。
そして地図を確認し、
「何だ。間違ってんじゃん!」と呟く。

その地図は、先日金子がファミレスでナプキンに書いたものだった。
金子は神保組が部屋を借りてヤバイものを隠していると、
銀次郎に情報を流したのだ。
「神保組の弱味を握って、ゆするんだよ。俺と、お前で。」と金子。
「俺と、金子で?」
「金子と銀次郎で。」「Gold & Silverで!?」
「金さん銀さんで!」「金閣寺と銀閣寺で!」と盛り上がる。
「流星会にとっても、目の上のタンコブ潰すチャンスだと思うけど。」
「ありかなしかって言ったら・・・ありかな!」

銀次郎が金子に連絡する。
「お前、マジで行ったの?バカじゃねーの?」金子が笑う。
「あ?」
「うそうそ。で、例の物あった?」
「ねーよ!つーか地図違ってんだけど。」
「・・・今何見える?」真顔になった金子が聞く。
「寿司屋。」
「そこ路地入っていくと、アパートがあるから。
 1階の101。急がねーと帰ってきちゃうぞ。」
銀次郎はアパートを見つけ、部屋の前に立つ。

「ごめーんくーださーい。
 うわぁー、きったねー長屋に迷い込んじゃったよー。
 めぼしい物なんて何一つありゃしない。
 あんなところに越中フンドシなんて干してあって。」


「取り合えず貰っておけば?」金子が携帯で言う。
「お前、緊張感なさすぎ。」
銀次郎はそう言いながら干してあったトランクスを取る。
「他には?なんなねーか?」
「ねーよ。・・・ん?」

「なんだ、おじやかー。
 こんなもの食らってんだからろくなものはねー。」
泥棒はそれに口をつける。
「うめぇ!
 腹減ってるとはいえ、こんなにウメーとは思わなかった。」

「あー、ウメー!ウメー!」
「美味そうに食うな、チキショー。」と辰夫。
「やべぇ。なんか腹が減ってきた。」と虎児。

「お!帰ってきやがった!どうしよう!」

銀次郎は慌てて押入れに隠れる。
「俺のパンツがない!!」
「俺のバカウケ、食われてるー!!」
「てめぇ、馬鹿!鍵かけろって言ったろ!」
部屋の住人たちが異変にすぐに気づき騒ぎ出す。
その時、押入れから携帯の着信音、『マツケンサンバ』が。
男たちは押入れの戸を開ける。
銀次郎は押入れの床下に隠れていた。
男たちがそこを開けようとすると、金子がインターホンを鳴らす。
「どうしました?さっき通報があって、不審な男がウロウロしてた
 らしいんですけど。」
「見てないですよ。」と慌てる男たち。
「とりあえず、外で話聞きましょうか。」
金子は男たちを部屋から出す。
その隙に、銀次郎は押入れで見つけた何かを持ち出し、
部屋から抜け出す。

組の事務所に戻り、その封筒を開けると、中からDVDが出てきた。
早速デッキに入れてみると、それはモザイクのかかった映像が。
やがてモザイクが消え、その映像を食い入るように見る銀次郎。
背後でリサが拳を握り締めるのも気づかずに・・・。
リサの咳払いに「ぶぉっほ!」
銀次郎の左目に、青あざが。

金子を問い詰める銀次郎。
金子が言っていた"ヤバイ"ものとは、海外から輸入した
無修正のポルノ。
彼らはそれを大量にダビングして売りさばいていたのだ。
「とりあえず証拠は押さえたから、あとはこれをネタに、
 神保組をゆすろうぜ。」
「そんなちっちぇーこと、やってられっかよ。」
銀次郎は帰っていく。

竜二が間借りする部屋。
虎児はメグミ(伊東美咲)もいる前で、竜二に『出来心』を
演じていた。
「ない!ここにあった俺のふんどしがない!!
 まったく!俺みたいな貧乏人の家に入るなんて、しけた泥棒だ。
 しかし待てよ。差配からたな賃の催促をされていたんだよな。
 泥棒に店賃を盗まれたといえば、それでもよこせとは言わないだろう。
 おーし!じゃ、差配を呼んでこよう。」
「ちょっと待ってくれ。サハイって何だよ?」虎児が質問する。
「大家さん。」
「じゃ、たな賃は?」
「家賃。」
「最初っからそう言えよ。頭いいふりしやがってよ。」
デート中なのに、という竜二に、
俺の知っているデートはこんな汚い部屋でするもんじゃない、と虎児。
竜二が落語の続きを言う。
「おーーい!差配さん!泥棒ですよー!泥棒!差配!泥棒差配!」

「何だよ八公、泥棒差配って。」大家(西田敏行)がやって来た。
「大変ですよ。泥棒に入られちまって。」と男(岡田准一)。
「え?何か置いていったかい?」
「盗まれたんですよ。店賃を。
 店賃だけじゃないんですよ。何もかも盗られたんですから。」
「へ~。あ、そう。じゃ、一個一個言いなよ。
 何もかも盗られたんだろう?お上に届けなきゃ。」
「いや、あのー。お構いなく。」
「そうはいかないよ。
 お上に届けりゃ、品物が出ることがある。」
「くれるんですか?」
「くれることも、ある。」
「そいつはありがてーや。
 それじゃ、あの。越中ふんどしを一本願います。」

竜二の部屋。
「そーんなもの、お上に届けられるか。」
「じゃ、布団なんかどうでしょう?」
「またずいぶん大きなものを持ってったんだね。どんな布団だい?」
「差配さんとこのは?」
「うちのは上等じゃない。唐草模様。」
「じゃー、うちも、上等じゃない。唐草模様。」
「マネしなくてもいいんだよ。じゃ、裏は?」
「裏は行き止まり。」
「この路地の裏じゃないよ。布団の裏だ。」
「差配さんとこは?」
「うちのは丈夫であったか、寝冷えのしないように花色木綿。」
「あっしんとこも、丈夫であったか、寝冷えのしないように花色木綿。」

師匠に稽古をつけてもらう虎児。
「ほ~。で、他には?」
「あとは、はだかの帯。」
「はだかの帯って何だよ。あ、あれかい?博多の帯かい?
 そりや~いいもん持ってたね。
 どんなんだい?」
「表が唐草で、裏が花色木綿。」
「おい、帯に裏なんてないよー。
 他には何を持ってった?」
「え~、刀が一本。」
「ほ~。刀?」
「ええ。裏が、花色木綿。」

「もういいよ。
 どうしたんだよ、小虎。今回は飲み込みが早いな。」
得意げな虎児。
「で、誰に教わったの?
 今のは確かに『出来心』だけども、私のとは少し違うようなんだがな。」

虎児は竜二に教わったことを白状。
小百合(銀粉蝶)は、
「この世界では、むやみに他人から教わっちゃいけないの。
 なぜだかわかる?
 演じる人によってね、癖やこだわりがあるの。
 くすぐりどころか、サゲまで変わっちゃったりするのよ。」と諭す。
どん兵衛は小虎を連れてどこかへ出かけていく。

「弟子の手前、言えなかったんだけどさ、
 少しでも上手くなろうとすることはいいことだよ。
 竜二がどんだけの腕だってことは、おいといてな。」
「何でストリップ小屋なんだよ。」
「補習だよ、補習。
 実はね、出来心には二つのサゲがあるんだよ。
 縁の下から隠れてた泥棒が出てきて

『おう!なんでぃ!さっきから聞いてりゃ、でっけーことばかり
 言いやがって。
 何が花色木綿だ。
 この家には布団どころか、腐った半てん一枚だってありゃしないじゃ
 ねーか。』
『お!お前、泥棒だな!』
『あー、いけねー。
 そ、そうなんですよ。
 お袋が、3年越しに患っておりまして・・・。
 ほんの出来心でございましす・・・、と、涙をこぼし、
 あ!』
『ハハハハハ。おめえは素人の泥棒だな。
 ま、出来心じゃしょうがねーや。
 おい八公!おめえもおめえだよ。
 何だって俺にあんな嘘を書かせたんだよ。』
『へい。あっしも、ほんの出来心でございます。』」

拍手をする虎児。
「へへ。これがまぁ、Aパターンだ。
 次は、Bパターン。
『ほんの出来心でございます・・・、と、涙をこぼし、
 あ!』
『ハハハハハ。おめえは素人の泥棒だな。
 お前、どっから入りやがった。』
『へっ?裏から入りました。』
『裏?どこの裏だ?』
『裏は、花色木綿。』」

ぶぁっはっは、と手を叩きながら大爆笑の虎児。
「へ~。お前さんもこっちの方が好きか。」
「いや別にそういう訳じゃねーけど。」
「そうかい。実は私はね、こっちのサゲの方が好きなんだよ。
 でも、高座にはかけないんだ。
 謙ちゃん(組長)がやってたサゲだから。」
30年前、このストリップ劇場の舞台に立ったことがあると
どん兵衛が話し始める。
「古典ばっかりやっててもしょうがねーってんで、謙ちゃん誘って、
 コントやらせてもらった。」

警官(笑福亭鶴瓶)と酔っ払い男(西田敏行)のコント。

「結構人気あったんだよ、中谷中っていうコンビ名でな。」
そば辰に場所を変え、どん兵衛が虎児に語る。

「あん時調子こいてヘマしなかったら、謙ちゃん、今頃ちゃんと
 芸人やってたかもしれねーな。」
「ヘマって何かやったのかよ!?」
「謙ちゃん、あー見えてもライバル意識が強かったんだよ。
 コンビやってる時、俺ばっかりが受けてたもんだからさ、
 それが面白くなかったんだろうな。
 突然、打ち合わせにないことをやりだしたんだよ。」

舞台の上で、突然、
「モノマネしたら許してやる。
 パンダや。上野のパンダのモノマネや!」

「私が困っているところを見たかったと思うんだ。
 でも、むしろ、こっちも調子狂っちゃって。
 やることなすこと、全部受けちゃうんだよ。
 ま、そんなことで、健ちゃん、芸人志す道を諦めてしまったんだと思う。
 次に会った時には新宿で、いい顔になってたからな。
 本当に悪いことしたよ。惜しいことをしたなー、謙ちゃん。
 勝手に才能がないと、思い込んじゃったんだからな。
 でも、あれがなかったら、謙ちゃん、ヤクザになってなかったろうし、
 そしたら、お前さんとも会えなかったわけだからな。
 だからな、小虎。お前さん、堅気になっても、
 感謝の気持ちってのを忘れたらダメだよ。
 今があるのは、健ちゃんのお陰なんだからな。
 高座に上がっているのは、謙ちゃんの代わりに上がってるんだ。
 それ位の気持ちで上がらなきゃダメだよ。」
「ああ。」神妙な面持ちで虎児が答える。
「ごめんな、しめっぽい話で。
 『出来心』聞いてたら、ついつい思い出しちゃって。
 ま、これも、俺の出来心、といってね。」
そう言い酒を飲むどん兵衛。

「バカじゃねーの!?」と虎児が言う。
「にゃんだとー!?」
「親父さんも師匠も、昔はタイガー&ドラゴンだったって訳だ。」
「そんないいもんじゃねーよ。ダニー&シラミーみたいなもんだ。」
どん兵衛はそう言った。

その日、寄席にテレビの収録が入ることになった。
虎児はドラゴンソーダに行き、竜二に絶対に来るよう誘う。
リサは虎児に、銀次郎の様子を聞く。

「大事な証拠なんだよ。
 神保組ってヤツラがいてさ、薬とか拳銃とか売りさばいてんの。
 これは、その、カムフラージュなんだよ。
 このケースにシャブを入れて売ってるんだよ。
 だから、誰にも言っちゃだめだよ。
 親父にも、アニキにも。
 二人だけの秘密ね。」

「ギンギンが言うには、もう証拠を押さえてあるって。
 あとは神保組の幹部を脅迫すれば、口止め料もらえるって。」
リサが虎児に言う。
「あいつ何考えてんだよ。」
「そうなの。ギンギンそんな大きなこと出来る器じゃないじゃん。
 バカだし髪型変だし、私もう怖くなっちゃって・・・
 警察に電話しちゃった。」

その頃、神保組のあのアパートには警察が集まっていた。
覚せい剤と拳銃を隠し持っていると、匿名の通報があったのだ。
駆けつけた金子は、焦り始める。

神保組の組員たちは、喫茶店で『マツケンサンバ』の着信音を耳にする。
そこには、竜二の姿が。
電話をかけてきたのは、虎児だった。
「あの話は嘘。」
竜二がそう伝えていると、あの男たちがやってきた。
突然電話が切られ・・・。

『仁義なき戦い』の出囃子に合わせて虎児が高座に上がる。
「いよっ。待ってました!」辰夫が声をかける。
「どうもー。ジャンプ亭ジャンプです。」
ジャンプの姿に、会場がざわめく。
「好きな競技はジャンプ競技!」
「おーい!小虎はどうしたー!?」辰夫が叫ぶ。

その頃、新宿へと車を飛ばす虎次郎。
その少し前、流星会に一本の電話が入る。
「お宅、若いもんにどういう教育してんだ!
 話のわかるもん、今すぐ、よこして下さいよ。」
その電話のそばで、痛めつけられる竜二。

「わしが行く!」組長がそう言うと、
「あいつは俺の舎弟です。」虎二はそう言い、立ちはだかる。
「とらぁ。」
その時、虎児の携帯が鳴る。どん太からだ。
「高座はどうするんだ!」
「すみません。ちょっと遅れますんで。」
「小虎、お前の変わりはいないんだよ。早くいらっしゃい。」
みんなの声に、虎児は組長を見つめる。

「おあとがよろしいようで。」ジャンプが観客に頭をさげる。
舞台の袖を確認して見れば、どん兵衛が伸ばすように言っているらしい。」
「え~。それではここで一曲。
 歌は、ヴァン・ヘイレンの『Jump』。」
1984

「ジャンプはもういいよ。」
半蔵らも不満そう。
その時、寄席に、竜二、メグミ、チビT、リサが登場。
「お!小辰!めずらしいな、お前が寄席に来るなんて。」
みんなは虎児に何があったのか心配する。
リサは黙りこくったままだった。

神保組の事務所を見上げる虎児と日向。
「腹、決まってるか?」と日向。
「はい。」
二人は事務所へと歩き出す。

「終わっちゃうよ。ジャンプ亭終わっちゃうよ。」
淡島の高座をこれ以上引き伸ばすことが出来ず。
どん太は自分の出番だと喜び始める。が、
「私が行くか。」
「ダメよ。どんちゃんが出たら、小虎がトリになっちゃう。」
小百合が言う。
「誰が落語やるって言ったよ。
 意地でもオオトリは譲らねーよ。」

どん兵衛はステージに上がり、『フランシーヌの場合』を熱唱。
「おいおい。歌謡ショー始まっちゃったよ。」と辰夫。
観客の評判は上々のようだ。
そんなどん兵衛の姿に、組長はため息をつく。
「しゃーないなー。」
組長はメガネを変えてどこかへ向かう。

どん兵衛が歌い終わり楽屋に戻る。
虎児がまだ戻ってこない事を知り、「あいつは破門だ!」と怒り始める。
その時うどん(浅利陽介)が、高座で誰かが喋っていると伝えにくる。

「あの~。
 スッチュワーデスっゆうのはずっと同じことばっかり言いまんな。
 おしぼりでございますー。
 おしぼりでございますー。
 おしぼりでございますー。
 わしの顔見てドキっとしたんやろね。
 おしぼりでござる言うて。
(会場大爆笑)
 かたじけない言うたった。」

「謙ちゃん・・・。」
どん兵衛が高座の組長を嬉しそうに見つめ、弟子たちによく見て
勉強するよう言う。

その時、虎児が日向と銀次郎に担がれて戻ってきた。
「すみませんでした。遅くなってすみませんでした。」
心配する師匠たちに、着物を・・・と虎児が言う。

「この間も新幹線乗りましてね、私。
 新幹線乗った時にあの~、」

楽屋の袖口に視線をやる組長。
「今日はこの辺で。
 この話は又今度やりますさかい。」

組長が席を立つと、会場、大拍手。

「遅くなりました。」
虎児が組長に頭を下げる。
組長はそばに立つ銀次郎を見る。銀次郎も頭を下げる。
「アホ。枕しかしゃべってへんわ。」
そう言い、楽屋にいく。そこには、どん兵衛が。
「謙ちゃん、ありがとう。
 本当にありがとう。」
「子分守るのは親分の義務や。」
どん兵衛の目には涙が光っていた。

「さっさと出て来いよー!」
虎児を待つ会場から声が聞こえる。
虎児は、頭には包帯を巻き、足を引きずりながら高座に登場。
「試合後のボクサーか!?」と辰夫。
足を少し崩して座り、頭を下げる。

「すいませんでした。転んじゃってね。
 
 えー。最近の若いやつは言葉を知らない。
 何か聞くとね、ありか無しかって眠たいことばかり言いやがる。
 あタイガータイガーねむタイガー。」

会場、しーん。
「えー。今のはナシだったようです。」
アハハハハ、と手を叩いて喜んだのは、竜二一人。
「えー。手柄を上げたいヤクザの倅、
 あーもう、これ、本題に入っています。
 まぁこれがね、奉行所に勤める小ずるい小僧と手を組んで、
 敵対する組の隠れ家に泥棒に入った。
 この出来心が、悲劇の始まりです。」

「出来心か。」と辰夫。
「さぞかしヤバイお宝があるかと思いきや、何だか銀色の円盤ばかり。
 せっかく泥棒に入ったんでと、持って帰ってみれば、これが、
 金髪美人のあられもない姿が映っているわけです。
 昔で言う、春画ですね。
 幕府御禁制には違いないが、これじゃあんまり面白くねーって、
 やれ薬だ鉄砲って、あらぬ噂を流しましたが、こ
 れが当人たちの耳に入って捕まっちまった。」


神保組。
「ここはスタンダードにエンコでもつめますか?2代目?」
銀次郎は抑えられながらも相手を睨みつける。
「何だよ。そっちから仕掛けてきたんだろうが!」
ナイフを取り出す神保組。
その時、ドアを開けやってきたのは警官・金子。
「て、て、て、手を上げろ!」
「どけ!」
その金子を突き飛ばし、虎児と日向が入ってくる。
「何だお前ら。」
「話がわかるヤツ2名です。」
「坊ちゃんこっちによこせ。」
「あっ!?」
「よこせって言ってんだろ!」
日向、持っていた木刀をPCめがけて振り下ろす。
PCは真っ二つに。日向、ニヤリ。
それを合図に大乱闘。
「うぉー。Vシネみてー!」金子が震えながら言う。

「相手は20人、こっちは2人。
 勝ち目はないと思いきや、
 日ごろのうっぷんを晴らすような、大立ち回り。
 あ、私じゃありませんよ。
 主に若頭の活躍で、なんとか2代目を救出し、
 春画を販売していたヤクザは、お縄となったのでございます。」

金子は、銀次郎・虎児・日向をパトカーに乗せて走る。
「おい、お前、手柄を上げてーんだったらよ、人に頼るんじゃねーぞ。
 なんでウチの大事な2代目巻き込むんだよ。」
虎児が金子に言う。
「なんっつーか・・・。」
「なんつーかじゃねーよ!」
「あ、すいません。あの、出来心っつーか。ありかなーと思って。」
「おい銀次郎!お前何してーんだかわからないんだったら、
 俺にくっついてろよー。
 かっこつけて、シャブとかチャカとか似合わないもんに
 手~出そうとしてんじゃねーよ、バーカ。」
「すいません・・・。
 俺も出来心っつーか、ありかなーって思って。」
「でよ、これ、表なの?裏なの?」
虎児がDVDを手に聞く。

「ヘッヘッヘ。裏は、花色木綿。」
虎児が観客にお辞儀をする。
舞台の袖から師匠たちも見守っていた。
観客席から組長が笑顔を見せ銀次郎、金子、日向と一緒に拍手を送る。
観客席を見渡す虎児。
するとそこに笑顔で拍手を送る竜二の姿を見つける。
虎児、舌なめずり。
そして兄弟子たちに抱えられ、退場する。

順喫茶・よしこ。
「はーい。ピザトースト、お待たせ。」
よしこが客に持っていく。
「さっそく使ったな。花色木綿。」師匠が虎児に言う。
「まぁ。」
「竜二が見に来ていたんだってな。何て言ってた?」
「いやまだ会ってないから。
 これ、今月の授業料。」
それを受け取る師匠。その時、テレビで先日の寄席の様子が
流れ始める。
「何だこれ!?」
「いやぁ。なんでもねー。」
「おい!」虎児が手を差し出す。
「今渡したじゃんかよ。」
「おいっ!!」
「あーやっぱりわかるんだねー。嘘は。ごめんねー。
 これ今月分、お返ししますよ。
 あの、ついでに言っておくけど、あのフランス語も嘘だから。」
「わかってるよ!!」

ドラゴンソーダの前のベンチ。
「面白かったっすよ。歌ありヤクザあり暴力あり。サーカスありみたいで。」
「おいそれ褒めてんのかよ!?」
「褒めてるんですよ。
 ずいぶん見ねー間に、寄席も変わったなーって思ってさ。
 つーかさ、あんたが変えたんじゃねーの?
 親父が歌歌うだなんて、昔だったら絶対あり得ない。
 ま、あんな様子だったらね、出てもいいかなって思いましたよ。
 まぁあんたの弟弟子は勘弁だけど、」
竜二の言葉に無言の虎児。
その視線の先には、ヤスオ(北村一輝)が笑みを浮かべて立っていた。


ニートという言葉。将来に迷う今時の若者たち。
金子も銀次郎はまさに、今時の若者たち。
そんな彼らも、親や周りの人に言われた言葉がきっかけだったり、
現実と理想のギャップに戸惑ったり。
そんなこんなであがいていました。

そして・・・なるほど!そういうオチでしたか!
金子は最初、冗談のつもりで神保組の話をしたんでしょう。
それが、銀次郎が本気で動き出したと電話で知り、
自分で手柄を取りたいと魔が刺した彼は、銀次郎を利用した。
虎児がパトカーの中で言うまで、私、気づきませんでした。(汗)

高座に上がる笑福亭鶴瓶さんの話、面白かったです。
さすがですね~!スチュワーデスの話なんて、話し方だけで
すごい引っ張られる。
新幹線の話の続きも聞きたくなりました。

虎児が選んだ『出来心』のエンディングは、師匠がやらないと言った
組長の十八番のパート2!
クドカンさんてば、裏DVDまで花色木綿とかけるなんて!
竜二がやっと寄席に出かけていきました。
観客席に竜二の姿を見つけた虎児、嬉しそうでしたね~!

次週!ヤスオが又登場しますね。楽しみです~!!